矢萩:まあ、試練になってしまっているご家庭は多いですよね。はたしてその子どもにとって今の時期に必要なものなのか。ただの苦行になってしまってはいないか。今と未来を閉じてしまっていないか。そういう自問自答を経て、合意形成したうえで主体的に試練に挑むことは成長の糧になりますね。

■人生に通ずる教訓を得られる機会

おおた:私自身は中学受験という、決して楽ではない体験から、子どもの人生を勇気づけ、励ますような教訓をどれだけ抽出できるか、ということにこそ意味あることだと思っています。例えば成績が下がったときに受験なんてやめちゃおうかって思うときもあるじゃないですか。そういうときにもう一回頑張ってみよう、と立ち上がる力だとか、友達が自分よりいいを成績取ったときに、悔しいって思いながらも、すごいねっていう言葉をかけられるようになる人間的成長もあるだろうし。厳しさが凝縮されているイベントであるからこそ、いい成績を取ることだけではない、人生に通ずる多くの教訓や学びが得られる機会だと思います。

矢萩:正解があった時代でも、ない時代でも、中学受験であってもなくても、学びのメリットって一言で言うと「成長」だと思います。知識を得ることや、できなかったことができるようになることもそうですが、それだけではない気持ちの移ろいや精神的な発達、親子関係の変化、なんでもいいんですけれども、とにかく成長することが目的だと割り切ることも必要です。

おおた:何を成長とするか、何を学び取ったらいいのかっていうのは、これも親の価値観ですよね。だからその価値観を子どもに伝えることが大事です。それがその子が生きていくうえでの一つの指針になります。

矢萩:あとは、成長するためにはやはり主体的であることが大事です。主体的であれば、どんな経験も糧にできると断言できます。もちろん、たとえ主体的でなくても、やらされていたとしても、いつかポジティブに振り返ることができれば糧にはできると思います。だけど、なかには糧にできずに潰れちゃう子がいるんですよ。それは何とかして救ってあげたいと思ってしまいます。

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