さて、暑さを理由に、息子さんの気持ちをなだめるということはできませんが、相談者さんは、この夏休みに「楽しい学びを40日間続けさせてあげる」というプレゼントをしてはいかがでしょう。
「君子は博(ひろ)く文に学びて、之(こ)れを約するに礼を以(も)ってす。亦(ま)た以って畔(そむ)かざる可(べ)し」(雍也第六)
広い教養を必須とし、ただ学ぶだけでなく学んだことを、礼に基づいて行うことが必要だと説いた孔子の言葉です。「博文約礼」という四字熟語の元になった言葉であり、孔子の学問論に一貫する考え方です。
孔子が生きた2500年前の「文」とは、学問だけではなく、文化的なことすべてに精通した広い教養のことを意味しました。相談者さんは、音楽、図工、料理、ダンス、囲碁・将棋など、息子さんが、ふだんの学校生活ではできない体験ができるような40日にしてあげてはいかがでしょうか。近くに住んでいるご両親が、習い事の送り迎えをしてくれるなら、孫が学ぶ姿を楽しめるのではないでしょうか。もし、習い事にお金がかかるようであれば、野菜や植物を育てるのも一案です。
子どもの時の体験というのは、とても大切なものです。子どもの可能性は無限です。子どもは、自分がやっていて本当に楽しいと思うものを見つけると、それまでとはまったく違う人格を身につけ、どんどん成長していくことができるものなのです。ぜひ夏休みをフルに使って、「学校では教わることができない学び」ができるプランを練ってみてはいかがですか?
「博く文に学びて」という言葉は、単に教養を身につけるということをいうものではありません。息子さんが、自分が行うことに心から喜びや楽しみを見いだせれば「内弁慶」という気性も変化するかもしれません。
また、『論語』には「楽しみ亦た其(そ)の中(うち)に在り」(述而第七)という言葉もあります。「今」という瞬間に没入して「生きていること」を喜びと感じていることを表した言葉です。
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