子どものスポーツで、ある変化が起こっている。全日本柔道連盟(全柔連)が今年度から、個人戦の全国小学生学年別大会を廃止したのだ。現在、好評発売中の小中学生のためのニュースマガジン「ジュニアエラ7月号」から紹介する。
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スポーツの全国大会は小学生年代でも、多くの競技で開かれてきた。その舞台の一つが消える。全柔連は「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」と廃止の理由を説明した。
スポーツで勝利をめざすことは当然だ。相手と競い合うところにおもしろさがあり、がんばる気持ちや工夫する力など、そこから得るものも多い。
そんななか、試合で勝利ばかりを追い求めてしまうのが「勝利至上主義」といわれるものだ。
コーチや保護者がミスした子どもを大声でしかりつけたり、練習で細かいことまで口出ししたりするのは、この勝利至上主義からくることが多い。廃止された柔道の大会でも、指導者が子どもに無理な減量を強いたり、保護者が審判に汚い言葉で抗議したりすることがあった。
全国大会のような大舞台があると、どうしても大人のほうが勝負にこだわり、子どもにきつく当たってしまう現実がある。「自信をもたせたい」など、子どもを思う気持ちからくる言動であっても、結果として、子どもが自分でいろんなことを試してみるスポーツ本来の楽しさを奪い、スポーツ嫌いを増やすことにもつながる。
「大人が、子どもの将来を見つめ直す契機にしてほしい」という思いが全柔連の決断の背景にある。
同様の動きは柔道だけではない。日本スポーツ協会も、スポーツ少年団の全国大会を中止することを検討し始めた。軟式野球、剣道、バレーボール、サッカー、ホッケーの五つ。理由として勝利至上主義のほか、「全国大会の存在が早くに専門性を高めてしまう」ことを挙げている。
子どものときは、いろいろなスポーツに触れ、さまざまな動きを経験して運動能力の基礎を発達させるのにふさわしい時期だ。全国大会で上をめざすと、一つの競技ばかりに取り組み、将来的にアスリートとして飛躍するチャンスを逆につぶしてしまう。そんなデメリットも指摘されているのだ。
「でも、やっぱり勝ちたい」というスポーツ好きの子もいると思う。もちろん、その思いは否定されるものではない。ただ、将来の大舞台をめざすためにこそ、今は順位にこだわりすぎず、技術や判断力を高める時期と考えてほしい。なにより異なるスポーツにも親しみ、体を動かす楽しさを満喫してほしい。
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