――料理ができなかったところから、料理人になると決心したのですね。なんでもできるタイプだったのですか?
いえ、小中高まで絵に描いたような普通の少年でした。通知表はオール3タイプというか。バランスはいいけど飛び抜けてもいない。今、魚がすごく好きなので、「昔は理科や生物が得意でしたか?」などと聞かれるんですが、残念ながらそうでもなく。5教科の勉強ではグッと入り込めるものはなかったですね。でも、勉強自体は好きだったんです。料理屋に修行に入ってからは、毎日お店が終わってから教わったことをメモして、自分でも調べて、ノートにまとめて。おかげで、すごい勢いで知識を吸収していきました。勉強していくなかで自分は魚が好きだ、ということがわかったので、途中で寿司屋に転職しました。そこでも、皆がお店が終わって飲みに行ったりしているなか、黙々と勉強していました。
――なぜそこまで努力できたのでしょうか?
職人の世界は上下関係がはっきりしているので、どうしても若者は下に見られてしまうんですね。それが悔しくて。だったら少しでも知識をつけて自信をつければいい、だったら勉強しよう、と思ったんです。素材、調理技術、味付けなど、寿司職人の勉強はいろいろありますが、なかでも魚に関する勉強はとても楽しかった。魚を見ている時、触れている時、食べている時、すべてが楽しい。修行に入った当初はどの魚がアジかもわからない状態だったのに、今ではアジだけで10分はしゃべれる。僕の場合は、大人になってから「さかなクン」になった感じですね(笑)。
――絵本では子どもたちが魚に夢中になっていく様子が描かれています。夏休み、子どもたちが楽しく自由研究に取り組むのに、おすすめはありますか。
子どもの学年に関係なく、魚が好きか、嫌いかに関わらず、おすすめしたいのは「お寿司やさんごっこ」です。ズバリ、家族でお寿司を作ってみること。買い物からでもいいですし、本格的にやるなら魚を釣るところからでもいい。学年によって材料は親御さんが用意して酢飯を丸めて上に魚の切り身を乗せるところだけをやってもいいし、高学年なら魚をさばくところからトライしてみてもいい。
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