■水平比較より、垂直比較。子ども自身の伸びを見よう

 そもそも、スパンが長い中学受験。1年、2年先のことになると、「そこに向かってがんばる」ことは小学生にとって至難のワザです。「大人だって、1カ月のダイエットで挫折することもありますよね。まして、まだまだ経験値の少ない小学生にとって、そんな先のことは想像もできません。それでもコツコツ勉強を続けることで、忍耐や継続する力、試行錯誤といったさまざまな力を身につけることができます。これこそが、将来大きく役立つ、中学受験で得られる大切な力だと思うのです」

 親は、もともとは子どもの幸せを願って中学受験を決意したのに、いつのまにか目先の合否ばかりが気になってしまいがちです。

「もちろん、目標は合格ですが、決してそれがすべてではありません。そこを見失わずに、プレ思春期の子どもを見守ることが大切だと思います」

 この時期に中学受験を上手に乗り切った家庭には、もうひとつ特徴があると繁田先生は話します。「比較には、水平比較と垂直比較があります。水平比較とは、横にいるほかの子どもと比べること。垂直比較は、その子自身の伸びを比較することです。これなら親子関係もこじれないのですが、水平比較をした瞬間に、子どもはやる気をなくします。受験を乗り切った家庭は『うちの子はうちの子』と、垂直比較ができていたところが圧倒的に多いですね」

■正しい「わかった」の感覚を体験すれば、子どもは変わる

  子どもは、わかった「つもり」で勉強を進めていることが多いもの。理解が浅いので、応用問題に向かうと、とたんに解けなくなるのはよく目にする光景です。「算数は式を丸暗記しているだけなど、おそらく半分以上の子どもが本当の意味での『わかった』を知らないのではないかなと思います。しっかり理解した、腹に落ちたという状態を子どもに実感させましょう」

 とくに5年生からはカリキュラムが急に速くなり、わかった「つもり」であいまいに進めるとその先で苦労することになります。そこで、子どもの理解度がわかる繁田先生おすすめの方法を。

「宿題などを見て『ちょっと怪しいかな』と感じたら、『ここ、説明してくれる?』と子どもに説明させてみるのです」

※「AERA with Kids 2022年秋号」(朝日新聞出版)から一部抜粋

(取材・文/編集部)

繁田和貴先生
繁田和貴先生
AERA with Kids (アエラ ウィズ キッズ) 2022年 秋号 [雑誌]

朝日新聞出版

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AERA with Kids編集部
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