一方、ステーキなどでの肉本来の味を楽しむ素材としては、ベジミートはまだ高いハードルがあります。Steakholder Foods社は、動物の細胞を培養した「培養肉」によってステーキを作ることを目指しています。彼らも同じように筋肉、脂肪、体液と、それぞれ異なる培養細胞を作り、3Dプリンターで形を形成し、その肉をさらに3週間成長させて食肉とするそうです。CEOのアリックさんによると、「培養細胞を“インク”として形成することが同社のオリジナル」と話します。本物の動物から採取される細胞を培養して作る培養肉では、味は、本来の肉とほぼ同じようになるはずと考えられています。

 細胞培養は、魚介類でも可能です。同社はシンガポールの会社と魚の細胞培養技術を共同開発しています。現在の培養肉の課題は、「細胞培養のためのラボ・コストが高いこと」だと業界関係者は指摘します。

 ベジミートの食感に異なる方法でチャレンジしているのは、Alfred’s社です。CEOのロニーさんは、アルゼンチンで畜産業を営んでいた家系に生まれましたが、本人はベジタリアン。そこでベジタリアンでも楽しめる新しい肉製品を開発しようと、学生時代からの研究室仲間であるマリーナさんとともに開発したのが、異なる素材を何層にも重ねて食感を作る技術です。この方法だと大きな塊も作りやすく、肉だけでなく、魚などもさまざまに形成できると話してくれました。

 ただ「やはり植物由来の素材で肉の味に近づけるには、限界がある」と言います。同社のマリーナさんも、Steakholder Foods社のアリックさんも「将来は、植物由来の肉に一部培養肉を足したハイブリッドになるだろう。2050年には、そのようなハイブリッド肉が肉食の常識になるだろう」と話します。

 魚の「培養切り身」を作ろうとしているのは、Wanda Fish社です。寿司の世界的な人気により、特にマグロが大量捕獲による絶滅の危機に瀕しています。同じようにニホンウナギも、2014年に国際自然保護連合(IUCN)が、絶滅危惧種に指定しました。ユダヤ教でウナギを食べる習慣はないのですが、Forsea社はウナギの培養に挑戦しています。同社のイフタフさんは、「現在ヨーロッパ市場では、多少価格が高くても環境に配慮する商品が選ばれる」と話してくれました。それは将来の地球環境への配慮からきているのでしょう。

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