豆などの植物由来の「代替肉」や、動物の肉の細胞から作った「培養肉」による食品開発が進むイスラエル。これらの肉が当たり前に食卓に並ぶ日は来るのか。現地から、開発の最新事情をリポート。
* * *
近年、家畜の飼育による環境汚染や、食肉用に動物を不自然に飼育することで蔓延する感染病の問題、大量捕獲による海洋生物の絶滅危機など、人間の食生活と嗜好の影響による環境問題が議論されています。それを技術力で克服しようと、豆を使ったベジミートなどの代替肉や、培養肉の研究が進んでいます。昨年11月にイスラエルで行われた「Food Tech IL 2022」には、その関連企業が多く参加していました。
たんぱく質は人間の体に必要不可欠な成分で、多くは動物性の肉などに頼っています。しかし植物性の豆からも取ることができます。大豆のたんぱく質は、肉食で得ることのできないたんぱく質を補います。
アジアでは、古くから仏教の伝播と菜食主義から、大豆を原料とした豆腐料理が作られています。古代文明が生まれた中東でも豆は元来大事なたんぱく源でした。フムスという料理に使われるひよこ豆やそら豆、ゴマなどは、今も日常的に重要な食品です。新しいフードテックは、それらの材料を本物の肉に近い味と食感に変えた「ベジミート」を作り出し、それらは動物からの食肉に置き換わろうとしています。
Redefine Meat社は、3Dプリンターを使うことで、その食感に近づけることができると考えました。彼らは「動物の肉は筋肉、脂肪、そして体液と、異なる要素が集まって一つの塊を作っている。そのようにベジミートの素材をわけ、それを3Dプリンターで再構成すれば食感は近づくのではないか」と考えました。2019年に同社のラボを訪問したときは、大学の研究室のように、開発者がさまざまな調味料を使って味を近づけ、試行錯誤していました。現在、同社はいろいろな代替肉製品を販売しています。開発されたベジミートによるハンバーガーを実際に食べてみると、ほとんど本物の肉と変わらない食感と味でした。
次のページへ