■大人も子どもも傷つきやすくなっている

安浪:そして、今は大人も子どももかつてよりタフさが減っているというか、傷つきやすくなっているから、そのような質問が来ても、やっぱり優しい回答しかしにくいですね。

矢萩:耳が痛そうなことをどう伝えるかは難しいのですが、これ、子育てや受験だけの話じゃないんですよ。僕はキャリアコンサルタントとしても活動しているのですが、キャリアの世界でも「良いフィードバックとは?」という話題はよく出ます。日本では、本人に言いにくいことや耳が痛いであろうことを、いかに傷つけずに伝えるかという技術の話になることが多い。本来は、フィードバックというのはそういうことではないんですが。

安浪:優しいフィードバックばかりしてしまうと、される側は優しいところだけ受け取って、その奥にある本質のところまで取りにいかない、という弊害もありますよね。本人の想像力にもよるのでしょうけど。

矢萩:自分で考えさせるためには、鏡のようなフィードバックが効果的なんです。つまり、何かを具体的にアドバイスするより、「今あなたの状態はこんなふうですよ」と見せて、どう思いますか?というふうに問いかける。自分の状況をいかにメタ認知させるか、ということが大事なんです。たぶん保護者も同じなんじゃないかな。説得しようとするのではなくて「今のあなたはこうですよ、どう思いますか?」っていうやりとりのなかで、アップデートしていくのが本質的なんだろうと思います。

安浪:なるほど。それは参考になります。

矢萩:思考停止している人が多いからこそ、最近中学受験で増えている「思考力試験」に意味があるっていう側面もありますよね。ちゃんと考えられる人に入学してきてほしい、という。

安浪:ある小学校の先生が仰っていたんですけども、例えば理科の授業で実験キットなどを組み立てさせると、昔の子は同じキットでも15分ぐらいでほぼクラス全員が完成できていたのに、今は授業時間全部を使ってもクラスの半分もできないことがあるそうです。できない子たちはまず説明書が読めない、あるいは説明書が読めても自分で作ろうとせずに、できている子を見て、あれでいいんだって正解を見てから取りかかろうとする。自分で試行錯誤して正解を取りにいかなくなった、そこがここ数年の変化だと。

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