「詰め込み」「偏差値」というイメージが強い中学受験。「受験のための勉強は子どもの将来に役に立つの?」「難易度より、子どもを伸ばしてくれる学校を選びたい」といった悩みを抱えている親御さんも増えています。思い切って「偏差値」というものさしから一度離れて、中学受験を考えてみては――。こう提案するのは、探究学習の第一人者である矢萩邦彦さんと、「きょうこ先生」としておなじみのプロ家庭教師・安浪京子さんです。前回に引き続き、今回も中学受験を巡る二人のフリートークをお届けします。

MENU ■四則演算ができない子が思考力入試で合格することも ■入学したはいいが、対応できる先生がいない ■補欠で入学した子はトップクラスになるケースが多い

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■四則演算ができない子が思考力入試で合格することも

安浪前回は、最近は親も子も思考停止になりがち、という話をしました。自分で試行錯誤をせずに、すぐに正解を知りたがる。だからこそ、大学入試も中学入試も思考力を問う試験が増えてきた、ということですよね。

矢萩:はい。中学受験はここ数年、思考力入試をはじめとした新タイプ入試やAO入試的なものがどんどん広がってきていて、そういう受験だったらやってみたい、と興味を持つご家庭が増えてきました。ところが、去年ぐらいから、そういうふうに入学させた子の教育が学校内であまりうまくいっていないのかな?と思われる事例を聞くようになってきました。

安浪:というと?

矢萩:入試の精度があまりにも緩く、最低限の学力、たとえば四則演算もきちんとできない子が入学してしまうケースが出てきているんですね。昔は中学受験といえば、小学校の勉強は問題なくこなせて、さらに塾で難解な問題に取り組むような小学生でなければ挑戦できないような雰囲気がありました。でも、最近では首都圏を中心に学校の勉強も得意ではない、という受験生も多くなってきていて、一度も模試を受けたことがない、という受験生まで、新タイプ入試を活用して入学するケースも出てきました。そういう生徒でも、学校との相性が良く、入学したいという思いが伝われば合格できたのですが、やはりそれだけで受け入れてしまうと、入学後にきちんと対応できない学校も出てきたんですね。だから新タイプ入試でも、ちゃんと能力を問えるような試験に変更するところが増えてきたと思っています。つまり、ガリガリにやる詰め込み的な一般入試をやらないにしても、基礎学力はやはり必要だよね、みたいな認識になってきたのかなとは思います。

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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