日本が誇る物理学の観測・実験施設「スーパーカミオカンデ」と同じ場所に、重力波望遠鏡「KAGRA」が完成した。この望遠鏡はどんなしくみで、何をどのように観測するのだろう? 小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」2020年1月号に掲載された記事を紹介する。

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 岐阜県飛騨市神岡町(旧吉城郡神岡町)にあり、16世紀末から2001年まで亜鉛・鉛・銀などの鉱物を産出し続けてきた神岡鉱山。そこに今、日本の、いや世界の物理学の最先端を走る観測施設がひしめいている。

 1983年、神岡鉱山の地下約1千メートルに造られたのが「カミオカンデ」。ここで87年に、太陽系の外で発生した素粒子の一種、ニュートリノ(※1)が世界で初めて検出され、その功績により2002年に小柴昌俊東京大学特別栄誉教授がノーベル物理学賞を受賞した。

 続いて、カミオカンデ(現在は跡地にカムランドという別の施設が建設され稼動中)の後を継ぐ「スーパーカミオカンデ」が1996年に稼働を始めた。この施設を使った実験によってニュートリノに質量(重さ)があることが世界で初めて確かめられ、2015年には梶田隆章東京大学宇宙線研究所長がノーベル物理学賞を受賞。カミオカンデ、スーパーカミオカンデは日本が世界に誇る観測施設として広く知られている。

●空間のゆがみが波となって伝わるのが重力波

 このスーパーカミオカンデと同じ神岡鉱山の地下に、今度は重力波望遠鏡「KAGRA」が完成した。「重力波って何?」と思うかもしれないので、簡単に説明しておこう。

 例えば星が爆発したり、ブラックホールのように重い天体同士が合体したりするなど、宇宙で非常に重いものが動いたとき、近くの空間(※2)はブルブルッと震えるようにゆがむ。この空間のゆがみが、光の速さで波となって伝わるのが「重力波」だ。重力波の存在は、アインシュタインにより100年ほど前に予言されていたが、観測が難しいため、ずっと確かめられずにいた。

 2015年9月から観測を始めた、アメリカの2カ所にある「LIGO」という重力波望遠鏡が、重力波をとらえることに世界で初めて成功した。この重力波は、地球から13億光年(※3)ほど離れたところにある二つのブラックホールが合体するときに発生したものだった。この発見後、さらにいくつかの重力波が観測されている。

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AERA編集部
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