●レーザー光でわずかな空間のゆがみをとらえる

 KAGRAやLIGOは重力波望遠鏡と呼ばれているが、星から届く光を観測する普通の望遠鏡とは姿もしくみもまったくちがう。重力波望遠鏡は、空間のわずかなゆがみを、レーザー光を使って見つけ出す装置だ。ただし、そのゆがみは太陽と地球の距離(約1億5千万キロ)で水素原子1個分(1千万分の1ミリ程度)の差とごくごくわずかだから、観測装置にはとびきり高い精度が求められる。そのためには、太陽の熱や地面の振動などの影響も可能な限り取り除かなければならない。まわりが硬い岩盤におおわれ、年間を通じて気温が13~15度と一定な神岡鉱山の地下は、こうした条件にぴったりなのだ。

 重力波望遠鏡はアメリカの2台のLIGOに加えて、イタリアの「Virgo」も観測を始めている。これに日本のKAGRAが加わり、世界の互いに離れた地点に3台以上の重力波望遠鏡がそろえば、重力波の発生源となる天体の位置とそこまでの距離を、より正確に特定できるようになる。そうなると、発生源をさらに詳しく観測し、重力波を発生させた天体現象のより詳しい観測と解明が期待できるという。KAGRAが加わった世界の重力波望遠鏡が、これからどんな発見をするのか楽しみだ。

※1 ニュートリノ:物質は、直径が1千万分の1ミリ程度の原子という小さな粒からできている。その原子はさらに素粒子と呼ばれる粒からできている。ニュートリノは素粒子の一つ。ニュートリノは、ほかの物質とほとんど反応しない。人の体はもちろん、地球すら素通りしてしまうほどなので、観測するのが非常に難しい。

※2 空間:空間は時間と関連しているので、正しくは「時空」という。だが、ここではふつうの空間をイメージしてもらえばいい。

※3 光年:光が真空中を1年かかって進む距離。約9兆5千億キロ。ちなみに、太陽系からいちばん近い星までの距離は約4.3光年。

【重力波望遠鏡の原理】
 重力波望遠鏡には、直角に交わる長さ3、4キロのパイプがあり、レーザー光をそれぞれのパイプ内に発射して、鏡で反射して返ってくるまでの時間を計る。レーザー光は、ビームスプリッターで2方向に分けられ、鏡に反射した後、再びビームスプリッターを通って検出器に入る。2方向に分かれたレーザー光は、ふだんは通る距離が同じなので同時に検出器に入る。しかし、重力波がきたときは空間がゆがむため、片方のパイプの距離は伸び、もう片方のパイプの距離は縮まる。そのため、レーザー光が検出器に入るまでの時間がわずかにずれる。このずれから、重力波を検出する。

(サイエンスライター・上浪春海)

※月刊ジュニアエラ 2020年1月号より

ジュニアエラ 2020年 01 月増大号 [雑誌]

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AERA編集部
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