原爆被害の悲惨さを伝える広島平和記念資料館がリニューアルした。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説する、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』8月号は、4年半ぶりに全面再開した資料館について紹介した。夏休みにぜひ訪れてみてほしい。
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1945年8月6日、アメリカが広島に投下した原爆がもたらした被害を伝える広島平和記念資料館(広島市中区、原爆資料館)が、4月下旬に全面リニューアルオープンした。資料館は、本館が55年、東館は94年に開館。2014年から両館が改修工事のため順番に閉館し、全面再開は約4年半ぶりだ。
展示の内容や方法は大幅に見直された。被爆者の平均年齢は82歳を超え、体験を直接聞けなくなるときもやがて来る。若い世代に原爆の悲惨さをわかりやすく正確に伝えられるよう、実物の資料の展示を重視した。
本館には二つのゾーンを設けた。「8月6日のヒロシマ」ゾーンには、爆風で曲がった鉄骨や、煙突を並べた。建物疎開(空襲による火災の延焼を防ぐために建物を壊す作業)に動員され、被爆死した子どもたちが着ていたボロボロの衣服なども展示されている。被爆後に髪の毛が抜けた子どもの写真など、原爆の放射線による影響を生々しく伝える資料も多い。
「被爆者」ゾーンでは、3歳の男の子が乗っていた焼け焦げた三輪車や、中身が黒焦げになった弁当箱などの遺品を展示。亡くなった一人ひとりに思いを寄せてもらおうと、顔写真や人柄にまつわるエピソードも添えた。
かつて資料館には、やけどをして皮膚をぶら下げて歩く「被爆再現人形」があったが、リニューアルで撤去した。人形と違い、実際は顔も性別がわからないほど焼けただれた人もいた。「被害はこんなものじゃなかった」という被爆者の批判もあり、間違ったイメージが独り歩きしないために展示から外した。
8月6日が何の日か知らない若者が増える一方、核兵器は今も世界に約1万 5千発も存在する。
核兵器のない世界をどうつくっていくのか。資料館に展示された様々な犠牲者の遺品に向き合い、「自分の大切な人だったら」と想像してみることが、最初の一歩になるはずだ。
【広島平和記念資料館】
約2万点の資料を収蔵。本館は被爆者の遺品など実物資料を展示し、東館では核兵器開発の歴史などが学べる。2018年度の入館者数は約152万2千人。このうち外国人は約43万5千人で、6年連続で過去最多を更新した。アメリカのオバマ大統領(当時)が16年に広島を訪問したことなどをきっかけに増加している。(解説/朝日新聞広島総局・東郷隆)
※月刊ジュニアエラ 2019年8月号より