グローバル化によって国際協力が深まると、さらに多くの国・機関を交えて議論する必要性が出てきた。そして、2007年に始まった国際的な金融危機などを受け、08年11月に初めて開催されたのがG20サミットだった。正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」。ここでも主眼は、経済・金融分野だ。
大阪でのG20サミットでは、自国産業を守るために貿易で相手国に何らかの制限を課すべきだとする保護主義が、トランプ大統領の「米国第一主義」を背景に勢いを増していることから、自由な貿易の重要性を訴える声明をG20の総意として出せるかが、大きな注目点の一つになる。
アルゼンチンで昨年行われたG20サミットでは、それまでの首脳宣言に必ず含まれていた「保護主義と闘う」という文言の削除に、米国が影響力を発揮した。今回声明をとりまとめる議長国は、自由貿易を推進する日本。議長の安倍晋三首相は各国首脳の中で最もトランプ大統領と親しい一人として存在感を発揮し、声明をまとめられるか。その手腕にも期待が集まる。
また、安倍首相は議長国として、海洋プラスチックごみの世界規模の対策や、途上国における女性教育や人材育成、質の高いインフラ投資などを積極的にとりあげるとみられる。
参加各国の首脳同士による二国間会談も大きな関心事だ。米中が「関税合戦」を繰り広げ、世界経済の不安材料となっている米中貿易交渉の行方を心配する中でのG20にもなるため、米中首脳が日本で直接会談し、解決策を見いだせるか。また、日米韓中ロの間では、短距離弾道ミサイルの発射を再開した北朝鮮の問題も議題になるだろう。
日本にとっては、北方領土問題をめぐるロシアとの協議がどうなるのか。関係がぎくしゃくしている韓国との首脳会談はあるのかなど、経済のみならず、政治分野でも課題は多い。
今回のG20サミットの会場は大阪国際見本市会場(インテックス大阪)。6月27~30日の4日間、会場や各国首脳が利用するホテル、空港周辺、それらを結ぶ高速道路や一般道に交通規制がかかる。そのため市内の市立幼稚園、小中学校、高校など約500校園が27、28日は休みとなる。また、空港での保安検査強化や街中のコインロッカー使用中止など厳戒態勢がしかれる。期間中は各国の首脳や政府関係者のほか、世界各国の報道陣が来る。警備の応援などのために日本全国から警察官も集まる。(解説/朝日新聞GLOBE編集部・山本大輔)
※月刊ジュニアエラ 2019年7月号より