平昌五輪で羽生結弦選手が連覇を達成してから約半年。いよいよ新シーズンが到来する。毎月話題になったニュースを子ども向けにやさしく解説してくれている、小中学生向けの月刊ニュースマガジン『ジュニアエラ』に掲載された記事を紹介する。

宇野昌磨/「勝ち負けよりも、本番で練習の成果を出せるかどうかが大事」という考え方の持ち主。練習量の多さではピカイチ (c)朝日新聞社
宇野昌磨/「勝ち負けよりも、本番で練習の成果を出せるかどうかが大事」という考え方の持ち主。練習量の多さではピカイチ (c)朝日新聞社
高橋大輔/ソチ五輪後に引退したが、4年を経て「試合の緊張感のなかでもう一度やってみたい」と復帰 (c)朝日新聞社
高橋大輔/ソチ五輪後に引退したが、4年を経て「試合の緊張感のなかでもう一度やってみたい」と復帰 (c)朝日新聞社

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 今季の目玉はなんといっても「ルール改正」だ。これまでジャンプの難しさばかりに注目が集まったが、どれだけ美しく技をこなしたかという、芸術的な側面が強くなった。

 フィギュアスケートは「パワーと美しさが共存する演技」だ。100年にわたりルール改正を繰り返して、そのバランスを取ってきた。

 平昌五輪では、トップ男子は4回転ジャンプを何本も跳んだ。羽生選手はジャンプ11本のうち計6本、宇野昌磨選手も計6本、アメリカのネーサン・チェン選手は計8本も跳んだ。しかしパーフェクトの演技を見せた選手はいなかった。

 また4回転ジャンプは身体への負担が大きいため、まだ筋力の発達していない小中学生や、難しい種類を練習したトップ選手たちがけがをするようになった。

 そのため国際スケート連盟は、「難しいジャンプに挑戦する」ことよりも、「それぞれのジャンプをいかに綺麗に跳んだか」に高得点を与えるルールにしたのだ。具体的には、ジャンプなどの技の基礎点は下がり、一つひとつの技の質に対してのプラスマイナスが「±3」から「±5」へと広がった。

 羽生選手は「ルールは自分たちが上手になるための指標なので、(新たな)ルールに沿ってもっとうまくなりたい」といい、ブライアン・オーサーコーチも「ユヅルの演技はもともと質が高く『+5』を取れる。彼の勢いは止まらないだろう」と語る。

 今季4年ぶりの復帰を宣言した高橋大輔選手は、現役時代に4回転1種類で戦ってきた。「復帰を決めたらルール改正があったので、タイミング的に新たなスタートを切れる」と意欲を高めている。

 もちろん女子にとっても大きな変化だ。宮原知子選手は、「今までよりも質の良さを意識して練習し、ジャンプは回転を早く、高さも出そうとしています」と語る。

 選手たちが目指すのは「より質の高い、美しい」演技。今季はその美しさに注目して観戦したい。(解説/スポーツライター・野口美恵)

※月刊ジュニアエラ 2018年11月号より

ジュニアエラ 2018年 11 月号 [雑誌]

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野口美恵
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