仕事と子育ての両立は、どうしてこんなにつらいのか。そう感じながら、毎日必死で走り続けている人は少なくない。待機児童のニュースを聞くたびに、上司や同僚に気を使い、後ろ髪をひかれながら会社を後にするたびに、いつになったら楽になるの?と思ってしまう。小学生になっても、ティーンエイジャーになっても新たな「壁」があらわれると聞けば、なおさらだ。AERA 2017年9月18日号では、そんな「仕事と子育て」を大特集。待機児童解消の切り札といわれる、企業内保育所を取材した。
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午後5時45分。岡田花子さん(30)は仕事を終えて、もうすぐ1歳になる娘の花音(かのん)ちゃんを迎えに行く。娘のいる保育所「WithKids」までは、片道1分。それはWithKidsが岡田さんの勤務先の中にある「企業内保育所」だからだ。
普通ならここからが魔の時間。できるだけ早く帰宅して夕飯を食べさせ、お風呂に入れて、一刻も早く寝かせなければ。ところが、岡田さんは保育所内で、花音ちゃんと二人で晩ご飯を食べ始めた。管理栄養士が作ったホカホカの親子メニューは、白身魚のあんかけにじゃがいもとにんじんと玉ねぎの煮物。豆腐と鶏そぼろのスープにご飯。岡田さんは言う。
「1センチ角にカットした野菜を娘がモグモグ食べて。もうこんなに食べられるようになったのかってうれしくなりました」
食べ終えると、東京・六本木一丁目の会社を後にして帰路に就く。着替えやおむつは保育所が用意するので仕事用のほかに大きなバッグを持つ必要もない。お風呂タイムをゆっくり楽しんで、絵本を読んで寝かしつける。
「ワーキングマザーというと、髪をふり乱しているイメージがありますが、そういう感じではないですね」(岡田さん)
フレックス出社でラッシュの時間帯を避けられるので、子連れ通勤もあまり負担ではない。
●今年度は7万人が目標
岡田さんが勤務するワークスアプリケーションズは、企業向けソフトウェアの開発・販売を手掛ける会社。2016年12月、独自に企業内保育所を開設したことで話題になった。
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