AERA 2023年3月13日号より
AERA 2023年3月13日号より

「加害者は『こんなところで事件は起きないだろう』という場所を探して加害します。その典型的なのが男子トイレで成人男性から男児に対して行われる性暴力です。女児よりも男児のほうが警戒がうすく、また男児のほうがズボンを脱いでしまいやすいなど、加害者はその傾向を熟知しています」

 フラワーデモの発起人の一人で、デモで被害者の声を聞いてきた北原みのりさんは、子どもの被害は、身内から受けるものが思った以上に多いと気づいた。

「親戚のおじさんから『お膝においで』と言われて膝に乗ったら、明らかに変な触られ方をしたとか、耳の中をなめられたと話す女性がいました。子どもの頃、親からAVを見せられたという人もいましたし、実の父や兄、義理の父、兄に性加害された人も本当に多い」

■性虐待は0歳でもある

 チャイルドファーストジャパン理事長で内科医の山田不二子さんもまた、家族からの性加害は深刻だと話す。

「性虐待は0歳から起こっています。たとえば2歳の子のオムツをかえようとしたときに、大泣きしたのをおかしいと思ったお母さんが、その子の性器を見たら傷ついていた、ということもありました。親だけでなく、学校や幼稚園、保育所の先生、施設の職員、医療者と、身近な人からの被害は山ほどあって、身近な人ほど手出しがしやすい」

 では一体、私たちに何ができるのか。

 外で起きる性犯罪の場合、加害者は柔和なイメージで、スマホのゲームや子どもの好きなキャラクター、おもちゃなどを使って警戒を解いて仲良くなり、徐々に体の境界線に侵入していき、犯行に及ぶケースが多い。年単位で手なずけて犯行に及ぶ加害者もいる。

「加害者はトイレの周辺や公園などで、親と一緒か、子どもがどんなときに一人になるかなど観察し、ターゲットを見定めていることも多い。外出先では子どもから目を離さず、頻繁にコミュニケーションを取れるようにしてください。SNSを利用した被害も多いので、子どもとオープンに話せる関係性を作ることは大事です」(斉藤さん)

 立正大学文学部社会学科教授の小宮信夫さんは、「とにかく子どもはだまされます」と強調する。防犯ブザーや護身術が役立たないわけではないが、「知っている人」の犯行では、使う機会もないだろう。

■入りやすく見えにくい

 そこで小宮さんは「犯罪機会論」という、犯罪を起こす機会を与えないようにして、犯罪を防ぐ方法論を提唱している。学校や習い事など、親が送り迎えをするのが理想だが、今の日本の働き方ではまず不可能だ。

「『地域安全マップ』を作ることを勧めています。一緒に地域を歩き、子どもに『入りやすく、見えにくい場所』が危険だと教えてください」

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