「経済学に心理学を加味した行動経済学の研究では、1万円の利益を得るより1万円の損をするほうが2倍以上も大きく感情が揺さぶられるそうです。

 安く買って高く売れば利益が出るのは誰もがわかっていますが、実際には買ったあとに株価が下がると『運用を続けて大丈夫かな』と不安になりますよね。人間の感情が投資を邪魔します」

 荒れ相場ほど長期、分散を大事にして機械的に投資することが大事。もっと早くお金を増やしたいと思ったら?

「高速道路で渋滞すると、一般道の抜け道を探したくなりますよね。違う道を走ってみると目的地と違う方向に行ってしまったり、一方通行で戻れなかったり、工事中で通行止めだったり。結局まっすぐ行くのが早かった……ということは、よくあります。

分散投資もこれと同じ。のろのろ運転に見えるときもあるでしょうが、長い目で見て目的地へ着実に進むための最適解です」

◎牛山史朗(うしやま・ふみあき)/ウェルスナビ 執行役員 リサーチ&クオンツ。1978年生まれ。京都大学大学院情報学研究科を修了。2003年に三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)入行、個人向け資産運用のアドバイスを担当。2007年より野村證券で投資戦略の開発。2015年、ウェルスナビに参画。同社のロボアドバイザーサービスの「頭脳」として活躍する金融工学のプロ

(構成/中島晶子) 

※『AERA Money 2022夏号』から抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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