米議事堂襲撃から1年を迎え、キャンドルと米国旗を掲げる人びと/1月6日、ワシントン(photo gettyimages)
米議事堂襲撃から1年を迎え、キャンドルと米国旗を掲げる人びと/1月6日、ワシントン(photo gettyimages)

 今年は米中間選挙の年。その先2024年大統領選挙もあるが、投票や集票をめぐり 混乱や暴動が起きる可能性もあり、早くも不安が高まっている。 AERA 2022年1月24日号から。

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「昨年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件は、今も続いている」

「1月6日が解き放ったものは、暴力に訴えて政治的権力を手に入れようという動きだ」

 事件から1年を迎えようとする今年1月5日にアップされたポッドキャストで、ダン・キルディ下院議員(中西部ミシガン州選出、民主党)は、こう警鐘を鳴らした。聞き手は、10代の頃からの幼なじみというドキュメンタリー映画監督、マイケル・ムーア氏だ。

 キルディ氏は昨年暴徒が議事堂を襲った際、議場内に身を潜め、ムーア氏に電話した。ムーア氏は、電話越しに暴徒が議場のドアをバン、バンと叩く音、そして警官が発砲した銃声を聞いた。幼なじみの命が危険にさらされている実況を聞いて「二度とこんな思いはしたくない」と思い出す。

 今でも米市民のトラウマとなっている1.6議事堂襲撃事件は、2020年大統領選挙が引き金だった。バイデン民主党候補(当時)が勝利した選挙結果に対し、トランプ大統領(当時)は「(票が)盗まれた」と主張。バイデン氏の勝利を承認する上下両院合同会議が行われる1月6日に「すごいことが起きる。ワシントンに集合せよ」とソーシャルメディアを使って何度も支持者に呼びかけていた。

■議事堂は戦場だった

 トランプ氏が同日、ホワイトハウス前の集会で「議事堂で会おう」と発破をかけると、数千人の支持者が議事堂に向かい侵入し始めた。

 支持者の「戦闘準備」は周到だった。「選挙結果は正当だ」という立場を取ったマイク・ペンス副大統領(当時)をつるし上げにするため、間に合わせの絞首台まで設置した。

 米紙ニューヨーク・タイムズに寄せられた合衆国議会警察官らの証言は悲惨だ。暴徒らは酸化剤スプレーやハンマー、斧まで準備していた。警官らは彼らの侵入を防ぐために素手で殴り合ったため、議事堂の床は血とスプレーのせいで滑りやすくなり、階段から落ちて負傷した警官も少なくなかった。議事堂内部がまさに「戦場」と化したことが明らかになってきた。

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