杉本亜美奈(すぎもと・あみな)/1988年生まれ、千葉県出身。33歳(撮影/写真部・東川哲也)
杉本亜美奈(すぎもと・あみな)/1988年生まれ、千葉県出身。33歳(撮影/写真部・東川哲也)

 短期集中連載「起業は巡る」の第2シリーズがスタート。今回登場するのは、フェムテックで女性の悩みの解消をめざす「フェルマータ」の杉本亜美奈(33)だ。AERA 2021年11月29日号の記事の1回目。

【写真】東京都港区の六本木ヒルズで開いた「フェムテック・フェス2021」

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「杉本さん、よろしくお願いします」

「あ、アミナって呼んでください。その方が慣れてるので」

 オンラインで取材を始めると、杉本亜美奈は開口一番そう言った。父はマレーシア人で母が日本人。父が国連関連の仕事をしていたため、アフリカのタンザニアで育ち、日本、英国、ドイツの大学で学んだ。日本に腰を落ち着けたのは4年前。そんな彼女はファーストネームで呼ばれる方がしっくりくるようだ。

「ちょっと聞いてくださいよ。私、頭にきちゃって」

 その日、アミナは怒っていた。アミナは2019年10月、フェムテックのベンチャー「フェルマータ」を立ち上げた。フェムテックとは、フィメール(女性)とテクノロジーを掛け合わせた造語。女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスを指す新産業だ。

 米欧でムーブメントが始まり、20年には日本でも、衆議院議員の野田聖子が自民党内に「フェムテック振興議員連盟」を発足させた。「フェムテックの需要を喚起することで日本経済が変わる」と野田はいう。

生理や妊娠はいいのに

 フェムテックがSDGsと同じように「旬のワード」になると、関連セミナーが花盛りになり、アミナの元にも講演の依頼が舞い込んだ。アミナを怒らせたのは、ある国立大学だ。アミナはZoomの画面越しで、速射砲のようにまくし立てた。

「先方が言うんです。生理はいい、更年期も妊娠もOK。でもセクシュアルウェルネスは困るって。それではお寿司(すし)のネタだけを食べるようなもので、フェムテックの全体像を理解してもらえません、と頑張ったんですけど、それはダメの一点張り。結局、私が降りたので、スピーカーは全員男性になるそうです」

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