次に、「国際協調」の時代に突入。冷戦状態が緩和して国際協調ムードが高まると、米ソの激しい宇宙開発競争は一段落し、有人月探査も、1972年以降、行われなくなった。一方で、宇宙開発も各国が力を合わせて進めようという機運が生まれ、アメリカの提唱で、ヨーロッパ、日本、カナダのほか、かつて敵対していたロシアも参加した国際宇宙ステーション(ISS)が生まれた。

 そして、いまは「民間の時代」だ。国主導が当たり前だった宇宙開発でも、技術や経済の発展とともに民間の進出がめざましく、企業や研究機関による人工衛星の打ち上げなども行われるようになった。さらに、より手軽に宇宙へ行けるロケットや宇宙船へのニーズも高まり、民間の競争が激化している。

 アメリカ航空宇宙局(NASA)は、2度の大事故で打ち上げ費用が膨大になったスペースシャトルを引退させ、ロシアのソユーズ宇宙船に頼らざるをえなくなっていた。そこで、民間の宇宙船であるクルードラゴンを使うことになった。そのほかの分野でも民間の進出が進んでいる。

●再び月へ! そして火星へ!

 今、宇宙開発の対象として世界各国が熱い視線を注いでいるのが月と火星だ。月では有人探査計画などが進み、火星には相次いで探査機が送り込まれている。なぜだろうか。

 冷戦の時代、ソ連と激しい競争を繰り広げていたアメリカは国家予算の5%も宇宙開発につぎ込んで、人類初の月着陸を成功させた。やがて、冷戦が終結して予算が大きく削減されると、科学的な興味もいったん途絶え、人類が月に行かなくなって半世紀が過ぎていた。

 しかし、日本の月探査機「かぐや」などによって無人の観測が続けられ、その結果、月の北極や南極周辺のクレーターの中には水がありそうなことがわかってきた。水があれば、生命誕生の可能性が高まる。大量に見つかれば、飲料水になり、食料となる植物も栽培できるかもしれない。こうして月への科学的な興味も、利用の可能性も高まった。月に行ける技術が開発されたこともあり、再び月探査が現実味を帯びてきた。そして、アメリカ主導の「アルテミス計画」のほか、中国やインドも月を目指すようになったのだ。

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