■20年たってもこれか

 そんななかで、稲田朋美衆院議員が声を上げた。かつて森氏が率いた派閥、清和会出身だ。ツイッターに「森会長の発言について」として、「私は『わきまえない女』でありたい。なぜなら、女性も少々空気読めないと思われても、臆せず意見を言うべきだから」と書いた。稲田氏に話を聞いた。

「批判するということじゃなくて」と前置きし、語った。

「話が長いとか、競争意識が高いとか、男性だってそういう人はたくさんいる。男性の中で女性が発言するのは、とても勇気がいること。わきまえるとか言い出すと、女性が気兼ねなく発言したり、トップになったりすることもできなくなる。だから私はわきまえない女でいたい」

 私は政治の世界を20年以上取材してきた。かつては政治家も官僚も、取材するジャーナリストも完全な「男社会」。少しずつ空気は変わってきたが、今回、嫌な思い出がよみがえった。暗黙のルールに満ちた「オールド・ボーイズ・クラブ」(森氏を「必ず問いつめる」とツイッターで発言したカナダのIOC委員も同じ表現を使っていた)にがんとはねつけられ、恐怖を覚え、馬鹿にされた(と思えた)。

 男の人にはこの気持ち、わからないだろう。そう言うと、問題が何も解決しないと思い、ぐっとのみ込んできた。それなのに20年たってこれか、と思う。

 それは「わきまえすぎた」せいなのかもしれない。私に限らず。だからみなさん、「わきまえない女」でいきましょう。いや、女だけじゃない。男性も。(朝日新聞編集委員・秋山訓子)

AERA 2021年2月15日号