長谷川一明(はせがわ・かずあき)/1981年、東京大学法学部卒。国鉄入社後87年からJR西日本。常務、副社長などを経て2019年12月から現職(撮影/写真部・東川哲也)
長谷川一明(はせがわ・かずあき)/1981年、東京大学法学部卒。国鉄入社後87年からJR西日本。常務、副社長などを経て2019年12月から現職(撮影/写真部・東川哲也)
コロナ禍で鉄道利用者が激減し閑散としていた5月のJR大阪駅前。長谷川社長は「今後もV字回復は難しい」と話す/5月7日午前9時58分、大阪市北区 (c)朝日新聞社
コロナ禍で鉄道利用者が激減し閑散としていた5月のJR大阪駅前。長谷川社長は「今後もV字回復は難しい」と話す/5月7日午前9時58分、大阪市北区 (c)朝日新聞社

 鉄道各社は今、コロナの影響で利用客が激減し岐路に立たされている。収益拡大のための鉄道事業以外での方針、そして経営基盤を強化のための「JR再結集」についてどう考えているのか。AERA 2020年10月26日号はJR西日本の長谷川一明社長に聞いた。

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──鉄道事業以外での収益拡大も重要になりそうです

 まさにその通りで、我々は鉄道以外の部分が遅れているという自覚はあります。自分たちの土地に限らず、駅周辺などをしっかり再開発して沿線価値、地域価値を上げていく必要がある。鉄道と沿線開発を一体で行うというビジネスモデルは、同じ関西で阪急の故・小林一三さんが築き上げたものですが、近年は関東の私鉄さんも非常に先進的な取り組みをされている。そうした事例からも学んで、ただ輸送していればいいというのではなく、トータルで沿線のお客様に向かい合う必要がある。これは私たちの強化ポイントだと考えています。

──具体的な方針はありますか。

 まず街づくりでは梅田とか三宮といったターミナルだけではなく、より居住地側、郊外側で開発を強化します。駅前に限らず、例えばこれから小中学校が統廃合していきますから、そういった跡地の活用も考えています。我々、これまではどうしても「鉄道運行に支障を来すような投資はできない」という慎重な姿勢を取ってきた。ですが今は突然2030年が訪れたという状況です。鉄道、不動産という垣根を越えて各地の案件に積極的に、スピーディーに対応して、そこで生んだ利益を鉄道に還元していく必要があると思っています。

 もう一つは、サテライトオフィスを作ってリモートワーク化の流れを捉えることです。最寄り駅にサテライトオフィスを作れば、家だとどうにも集中できないという人々のニーズを捉えられます。白浜、倉敷、尾道といった場所に作れば多拠点居住、多拠点勤務の流れを生み出せ、運賃面でも施設運営でも収益につながります。実験的なレベルではありますが、すでに事業者様と協力して、そのようなサテライトオフィスと運賃をコミコミでいくらにしますといった商品も作ってマーケティングしているところです。もちろん、施設を全て自前でやるのではいけない。地域のみなさんと一緒に、地産地消につなげていく必要があると思います。

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