「負けました」が人を育てる! 羽生善治九段も考える将棋“感想戦”の重要性とは? (1/3) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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「負けました」が人を育てる! 羽生善治九段も考える将棋“感想戦”の重要性とは?

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古川雅子AERA
高橋和女流三段の指導対局は「よろしくお願いします」の挨拶から。習うより慣れよで、「まずは大人が模範を見せ、教え込まない」のがモットー(撮影/写真部・松永卓也)

高橋和女流三段の指導対局は「よろしくお願いします」の挨拶から。習うより慣れよで、「まずは大人が模範を見せ、教え込まない」のがモットー(撮影/写真部・松永卓也)

はじまりも、終わりも、頭を深々と下げる。将棋が育む謙虚な心の表れだ (c)朝日新聞社

はじまりも、終わりも、頭を深々と下げる。将棋が育む謙虚な心の表れだ (c)朝日新聞社

AERA 2020年10月5日号より

AERA 2020年10月5日号より

聖隷クリストファー大学で実践している「板書感想戦」。協同で探究していく将棋の感想戦の要素を取り入れ、授業者の意欲が高まったという(写真/飯田真也教授提供)

聖隷クリストファー大学で実践している「板書感想戦」。協同で探究していく将棋の感想戦の要素を取り入れ、授業者の意欲が高まったという(写真/飯田真也教授提供)

 藤井聡太二冠の登場が「変革」をもたらしたのは、将棋界だけではない。子どもの教育に将棋が良いのでは──そう感じた人も多いはずだ。挨拶が心を落ち着かせ、「負け」が人を豊かにする。AERA 2020年10月5日号将棋特集から。

【高橋和女流三段が指導する教室の写真はこちら(計8枚)】

*  *  *
 大盤を前に、「次の一手は、どこに駒を動かすのがベストかな?」と問いかける。すると、小学生18人が次々に「ハイッ!」と元気な声で挙手する。

 9月中旬、東京・吉祥寺にある将棋サロン「将棋の森」の子ども教室「しょうぎテラコヤ」を訪ねると、ワイワイした講義風景が見られた。指導役は、高橋和(やまと)女流三段(44)だ。

 対局の時間になると、子どもたちは一気に集中モードに。教室に響くのは駒音だけになった。子どもたちのマナーの良さに、正直驚いた。

 高橋さんはオンとオフの「モードの切り替え」ができるようになるのは、将棋ならではの良さだと話す。

「将棋の場合、『三つの礼』の決まりがあって、必ず対局する相手と挨拶を交わしますよね。これが切り替えスイッチの役割を果たしていて、周りの雰囲気から自然と学んでいくんです。『あ、今は静かにするんだな』と。それに、大きい子が低学年の子に『静かにしないとね』とさり気なく注意してくれたりする。なので、私が大きな声で注意する必要もないんですよ。楽させてもらってます(笑)」

■負けを認めるプロセス

 将棋を習うと、精神面での成長にも結びつくという。

 都内在住の11歳の男の子は、将棋歴が9年。子ども向けの大会で賞をもらった経験もあり、ここにきて将棋の腕を上げているという。母親は言う。

「うちの子は幼児の頃は癇癪(かんしゃく)持ちで、我慢することが苦手でした。欲しい物があれば、『買って!』と騒ぐし、カードゲームで負けただけでも、ワーッとカードをばらまいたりしていたし。でも、将棋を習い始めてからは、我慢や待つ姿勢を身につけることができるようになったんです。将棋って、相手が熟考している間は、ひたすら待ちますから。精神論というより、純粋に対局が楽しいから待てるようになったんでしょうね」

 礼儀も、我慢強さも、対局の経験を重ねる中で、「子ども自身が獲得していく」と高橋さん。

 まずは、「よろしくお願いします」と“始まりの礼”を交わす。勝負が進み、勝てないと判断した側が敗北を認めて「負けました」と自ら頭を下げて伝えるのが“負けの宣言の礼”だ。


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