今年の夏休みは期間も短いし宿題の内容もいつもとは違う、という地域も多いのではないでしょうか。読書の課題も冊数が減ったり、読書記録も任意だったりといろいろのようですが、もし読書感想文の課題が出ているなら、重い気分でマス目を見つめて時間だけがどんどん過ぎる、ということがないよう準備をしておきたいもの。「AERA with Kids夏号」(朝日新聞出版)では、ノンフィクション作家として第一線で活躍しながら、子ども作文教室も開催している神山典士さんに、「自分の言葉で書く読書感想文」について解説してもらっています。

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「大人でも、さあ本を読んで、そして書いてみてって原稿用紙を渡されてすぐに書けますか? 書けないですよね。子どもはもっとパニックです。じゃあどうするか? 文章にする前に、まずは思っていることをいろいろ話してもらうんです。書くのはそのあと、お話するように書けばいい」と教えてくれたのは、ノンフィクションライターの神山典士さんです。

 子どもも大人も、書くコツは同じ。まずは、感じたこと、伝えたいことを話してみる。次にそれを忘れないように、メモに項目別に書きとめます。実はこれ、神山さんも作品を書くときに実践している方法なのだそう。

「いきなり書き始めるのではなく、言いたいことを一つひとつ口にして、書く材料を用意する。材料さえあれば、あとはそれをどういう順番で書くか、どう組み立てるかは、メモを動かせばいい。頭の中であれこれ考えるよりずっとラクだし、パズルみたいで楽しいですよ」

 思っていることをいきなり“文章”にするのではなく、まずは親子で“言葉”にしてみてください。確かにおしゃべりなら、紙に書くよりもずっとハードルが低くなります。ポツリポツリとでいいので、口から出てきた子どもの“気持ち”を、メモに残してみましょう。自分の思いがちゃんと目に見える言葉となって並ぶことで、頭の中が整理されます。 

 親は、子どもの気持ちと言葉をすくいとって、おしゃべりしながら膨らませてあげるだけ。「どうしてそう思ったの?」「あなたなら、どうしたと思う?」などと質問すれば、さらに新たな言葉が生まれるでしょう。大切なのは、その本を読んで何を感じたのか、どこが印象深くて、何に驚いたのかという子ども自身の言葉です。上手な文章を書かせようと思わず、その子の気持ちやその子らしさがよくわかる言葉が入っていることが一番。

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篠原麻子
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