江戸時代の人骨の歯に残っていた「歯石」からDNAを取り出して、当時、どんなものが食べられていたのかがわかった。昔の人々の食生活を解き明かすのに役立ちそうだ。小中学生向けニュース月刊誌「ジュニアエラ」7月号の記事を紹介する。

江戸時代の歯磨きのようすを描いた浮世絵「風俗三十二相 めがさめそう」(国立国会図書館デジタルコレクション)
江戸時代の歯磨きのようすを描いた浮世絵「風俗三十二相 めがさめそう」(国立国会図書館デジタルコレクション)

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 にぎりずし、天ぷら、うなぎの蒲焼きなどが江戸時代の庶民の人気料理だったことは、浮世絵や書物などで知られている。でも、実際にどんな食材を食べていたのか、科学的に分析されたことは、これまでなかった。

 そこで琉球大学や東京大学などの研究チームが、発掘された人骨の歯についた「歯石」を削り取って分析し、食べられていた野菜などの種類を明らかにした。調べたのは深川(現在の東京都江東区)から発掘された江戸時代後期の町人の骨13体の歯で、内訳は成人男性6人、成人女性7人だ。

 歯石というのは、唾液に含まれるカルシウムや口の中の細菌などが歯についてかたまったもの。子どもの歯にはあまりつかないが、大人では、ていねいに磨いている人の歯にもこびりつく。最近の研究で、歯石からは、食べた野菜や果物、肉や魚のDNAが見つかることがわかってきた。DNAは生物の種ごとに異なるので、今回、研究チームは歯石から取り出したDNAの違いを読み取って、野菜などの種類を割り出したのだ。

 DNAからわかった野菜の種類は、イネ(米)、大根、ニンジン、カボチャ、栗、シソ、ネギ、スイカなどだ。ということは、江戸時代の人々も私たちと同じ野菜を食べていたのだろうか? それらは今の野菜と同じものなのだろうか? 琉球大学の澤藤りかい研究員(現・総合研究大学院大学の特別研究員)に聞いてみると、「今回調べてわかったのは植物の種類で、品種まではわかりません。たとえば大根といっても、色や形、味などが品種によって少しずつ違います。江戸時代の品種が今と同じとは限りませんが、描かれた大根の絵は、誰が見ても大根とわかります。だから、今と同じような大根を食べていた可能性が高いと思います」とのこと。

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上浪春海
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