音楽教室から著作権料「年間10億円」の試算も JASRAC「市民感覚」を負かした法理論とは?

2020/03/09 08:00

たくさんの子どもたちが音楽教室で指導を受けている。今回の判決は、音楽教室に大きな影響を与える(写真:ヤマハ音楽振興会提供)
たくさんの子どもたちが音楽教室で指導を受けている。今回の判決は、音楽教室に大きな影響を与える(写真:ヤマハ音楽振興会提供)

 音楽教室での演奏にも著作権料を支払わなければいけないの? 教室側がJASRACを訴えた訴訟では、誰もが抱く疑問に司法判断が下った。AERA2020年3月9日号では、音楽教室側の主張を打ち砕いたJASRACの法理論を紹介する。

*  *  *
 ヤマハなどの音楽教室で楽曲を演奏する際は、著作権料を支払わなくてはならない──。音楽教室と、日本音楽著作権協会(JASRAC)が全面対決した訴訟は、JASRACが勝訴した。裁判所はなぜ、JASRACの主張を認めたのか。

「大変遺憾、残念だ」

 2月28日午後、教室側でつくる「音楽教育を守る会」幹部は、東京地裁で報道陣にこう語った。言葉は少ないが、落胆の色は濃かった。同会事務局は取材に「市民感覚からかけ離れた判決。到底納得できない」と漏らした。

 一方、勝訴したJASRACは世古和博常務理事が記者会見し、「我々の主張が全面的に認められた」と勝利宣言した。ただ世古氏の表情は終始、神妙だった。JASRACにとっては「勝訴は想定通り。世間の支持を得られるよう謙虚な姿勢を示すことが重要」(関係者)なのだ。

 訴訟は、教室側が2017年6月、JASRACを東京地裁に訴えたもの。教室内での講師や生徒の演奏をめぐって著作権料の支払いを求めてきたJASRACに反発し、「JASRACには請求する権利がない」ことの確認を裁判所に求めた。

 争点は、作曲家や作詞家らが専有する「演奏権」が教室内での楽曲の演奏に及ぶかどうか。演奏権は著作権法22条にこう定められている。

「公衆に直接聞かせる目的で演奏する権利」

 典型的な事例は、多数の観客が詰めかけるコンサートやライブだ。歌手や興行主が収入を得るのに、作曲家や作詞家が無収入だったら確かにおかしい。

 このルールが、10人足らずの音楽教室での指導時の演奏にも当てはまるとJASRACは主張。「10人足らずで公衆!?」「練習時の演奏に著作権料!?」。そんな「社会一般の感覚」を根拠に教室側は猛反発した。

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