話題の映画「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」。かわいいキャラクターたちが登場するこの映画の背景を描いているのが、美術監督の日野香諸里さん。どんな仕事なのか聞いた。小中学生向けのニュース月刊誌「ジュニアエラ」12月号に掲載された記事を紹介する。

映画「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」は大ひっと上映中! (c)2019日本すみっコぐらし協会映画部
映画「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」は大ひっと上映中! (c)2019日本すみっコぐらし協会映画部

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――アニメの「美術監督」ってどんな仕事?

 絵を描くことが好きで、大学は美術系に進み油絵学科で学びましたが、いざこの世界に入ってみるとアニメの背景の描き方は非常に特殊。まずはその技術を身につけていく職人修業のようでした。最初に刷毛(はけ)を使って画用紙の両面を水でぬらし、ちょうどいい水加減になったところで大まかな色を一気に乗せていく「地塗り」という作業は、早く美しく仕上げるために生み出された背景技法です。

 アニメの制作現場は、監督のほか、演出、作画、色彩、美術、撮影、編集と分業体制になっており、さらに各部署をつないで全体の進行をとりまとめる制作部があります。キャラクターが動き回る世界を作るのが美術チームの仕事で、その美術チームを統括するのが美術監督です。

 美術監督は監督と話し合いながら、その作品に合った舞台の設計や色合い、タッチを決め込むために「美術設定」や「美術ボード」を描きます。それに合わせて背景スタッフが実際に仕上げた背景の雰囲気や質を、一本の作品内でそろえていくのも美術監督の仕事です。作品の規模の大小はありますが、基本はチームで作り上げていくものなので、なるべく皆がのびのび作業できるような雰囲気づくりを心がけています。

――仕事の醍醐味は?

 画面の中で背景美術が占める割合は少なくないので、その深い部分に関われる美術監督は責任と同時にやりがいがあります。仕上がった絵を監督や現場スタッフ、見ていただいたお客様に喜んでもらえるときがやっぱりうれしいです。

 締め切りがあるので、毎日が勝負です。プロの作り手として、常に高いクオリティーを保つ努力を続けなければならないのが大変かもしれません。

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宮本さおり
ライター 宮本さおり

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