原爆文学としてだけでなく、「原民喜の生涯と作品を等身大の存在として見つめたかった」梯久美子さんインタビュー (1/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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原爆文学としてだけでなく、「原民喜の生涯と作品を等身大の存在として見つめたかった」梯久美子さんインタビュー

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北條一浩AERA#読書

梯久美子(かけはし・くみこ)/1961年生まれ。ノンフィクション作家。『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で第37回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』で第68回読売文学賞(評論・伝記賞)はじめ3賞を受賞(撮影/写真部・大野洋介)

梯久美子(かけはし・くみこ)/1961年生まれ。ノンフィクション作家。『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で第37回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『狂うひと 「死の棘」の妻・島尾ミホ』で第68回読売文学賞(評論・伝記賞)はじめ3賞を受賞(撮影/写真部・大野洋介)

 小説『夏の花』で知られる作家・原民喜の生涯を描く『原民喜 死と愛と孤独の肖像』。死の想念にとりつかれた幼年期、妻との愛情あふれる青年期、被爆を経て孤独の中で小説を書いた晩年が綴られる。なぜ原民喜を選んだのか、ノンフィクション作家・梯久美子さんに聞いてみた。

*  *  *
 論じないようにしよう。最初にそう決めたと梯久美子さんは言う。やるべきなのは批評ではなく紹介であると。

「素敵なエピソードがたくさんあるんです。だから今回の本ではそれらを紹介するだけでも十分だと思いました。原民喜ってある意味、とても“今っぽい”。こういう人、いるな、と身近に感じてもらうことが大切だと考えました」

 最近でこそ原民喜の文庫の詩集や独自に編集された短編集が出るようになったものの、やはりまだ多くの作品が読まれているとは言い難い。人類が初めて経験した原子爆弾の悲劇を書いた『夏の花』の価値は疑うべくもないが、原爆ばかりに収斂されがちな作家の生涯と作品を梯さんは等身大の存在として見つめたかった。

「私はデビュー作の『散るぞ悲しき』の時から、手紙が大きなテーマで、今回も原民喜の遺書に惹かれたことが出発点です。それともう一つは、石内都さんの写真集『ひろしま』との出合い。石内さんの写真には被爆した人々のワンピースやブラウスが本当に美しく撮られていて、私はそれまで膨大な戦争の遺品を見てきたつもりだったけど、資料として見ていたことに気づかされました。芸術でしかできないことがきっとあり、一人の文学者の人生をたどることで、見えてくるものがあるはずだと思うようになったんです」

 原と親しく、遺書を受け取り、今も健在の“奇跡の少女”こと祖田祐子さんのことなど、本書には従来の原民喜研究にはない新側面がいくつもあるが、加えて梯さんは、原が自死を遂げた事実から目をそらさないことを自らに課した。

「新書で出したいと希望したのは、値段の高くない本で若い人に興味を持ってほしかったからです。当初は自死について大きく扱わないようにしようと考えましたが、避けてはダメだと思い直しました」


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