テレビで最近怒りませんね、と言われます。私のキレ芸は、ボケではなく、指摘に近いと思うんです。大声で指摘する。だからあながち的外れじゃないことを言ってしまう。私が中堅になった今、キレても誰かを傷つけることになる。

 私にとって、笑いが起こらない怒りなんて、そんな悲しいことはない。ご意見番ではなくて、私は笑わせる人でありたいんですよね。

 そんなわけで、もう5年ほど怒りを封印してます。悪口も愚痴も言わず、マザー・テレサを目指してます。冗談ではありません。冗談は苦手、それも私の芸人としての問題点だったなあ(笑)。もし心が乱れた時は、とにかく何かに感謝することにして、神社に行ってみたり、ゴミ拾いしたりしています。

 ですがマザー・テレサ的には、人から持ち込まれた愚痴や悪口も軽くスルーするようになってしまって。ひょっとしてこれは寛容になったんじゃなくて薄情になったのかもしれない、なんて逆方向から悩んでみたり。あー、みなさん、どうしているのでしょう。(ライター・浅野裕見子)

AERA 2017年9月11日