「レモンをどう観光資源にいかしていくか、縦割り行政なんていわないで、ブランディングのために各課が連携してやってきました」

●14の企業や大学と連携

 部門も組織も超えたからこそ生まれたレモンブーム。その後も14の企業や大学と協定を結び、37の瀬戸内レモン商品を世に送り出した。観光客も増え続けており、15年は7千万人弱と、4年連続で過去最高を更新した。

 現在の悩みは、生産量の不足。レモンは寒波に弱く、例年の4割しか収穫できなかった年もある。現在の収穫量は約5700トンだが、協定を結んだ企業に安定供給するために、20年までに倍の1万トンに増やそうと計画中だ。販売額も17億円から22億円に増える推計。大濱さんが増産計画の指揮を執る。単価が安い温州みかんやTPPで最も影響を受けるであろうネーブルなどをレモンに植え替えてもらい、柑橘農家の収入アップも狙う。

 しかし、植え替えてから実がなるまでの3~4年は収入が途絶えてしまううえ、柑橘農家の平均年齢は70代と高齢化も進む。新しい試みを受け入れる土壌は乏しかった。そこで、600万円の予算をとってレモンの接ぎ木を事業化した。ネーブルに接ぎ木すれば、ネーブルを収穫しながらレモンも実をつけてくる。結果、空白期間が少なくなり、高齢の農家も始めやすい。

「私はJAや農家さんに直接働きかけることはできないのでもどかしくはありますが、だからこそ事業で彼らの声に応えていこうと思っています」

(編集部・竹下郁子)

AERA 2016年10月10日号