同紙記者たちの元に、数カ月かけて段階的に電子ファイルがもたらされた。記者たちは、約100ギガバイトを受け取ったとき「大きな記事のネタ」、1千ギガバイトを超えたとき、「本当に多くの大きな記事のネタ」があると確信したという。

 もたらされた文書は、タックスヘイブンでのペーパー会社の設立で知られる、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の内部記録だった。

 記者たちは、調査報道でそれまで何度も協力しあってきた「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)に相談した。

 ICIJは米ワシントンに事務所を置く非営利の報道機関。世界の調査報道記者らをメンバーとし、ネットワークを生かして国際的な社会問題の取材と報道に取り組んできた。

 ICIJは2011年、独自に入手した秘密ファイルをもとにタックスヘイブンの問題の取材を始めた。オーバマイヤー記者はその取材に関わっていた。
 
 13年4月にタックスヘイブンに関する最初の記事を出すと、欧州のルクセンブルクが多国籍企業の税逃れを手助けしていたことを裏付ける秘密資料が新たにICIJにもたらされた。14年11月にICIJがそれらの文書を報道。ジョン・ドウから最初の接触があったのはその頃とみられる。

 最終的に入手できた電子ファイルのデータ量は2600ギガバイト。映画を丸ごと収録できるDVDに換算すると600枚近くにのぼる。過去40年弱にわたって作られた文書のPDFファイル、ワードファイル、電子メール、スキャン画像など1150万件。21万余の法人に関するものだった。記者たちは、この「特ダネの宝庫」に、ある思いを込めて「パナマ・ペーパーズ(パナマ文書)」と名付けた。(朝日新聞編集委員・奥山俊宏)

AERA  2016年4月25日号より抜粋