独自の切り口で自ら多数の書籍を企画、ヒットを飛ばしてきた幻冬舎の見城徹社長。一見「攻め」の姿勢に見える見城社長だが、実は常に「ウジウジ悩み」「くよくよして」いると言う。その胸中を次のように明かした。

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 僕は、ネガティブというよりマゾヒストなんだよね。常に自分が悪い、いけないんだという思考ができてしまっている。これは生まれ落ちた時から持っている要素なんでしょう。何をやるにもウジウジ悩み、くよくよして生きているから、いつも憂鬱。

 4月に「DRESS」という40代女性向けの月刊誌を出した時もそう。雑誌を出すため、幻冬舎が出資して新会社を作った。幻冬舎は100%近く僕の会社。僕がやりたいようにやって何が悪いと思うけど、上場していた時の名残で、取締役会で役員一人ひとりの承認を得なければいけないわけです。何でまた新雑誌なんて引き受けたんだろう──。あの取締役会の時ほど憂鬱だったことはなかった。

 くよくよするからいつも「最悪の事態」を想定し、毎日恐怖に震えて眠ります。しかし、震えているだけでは何も解決しない。恐怖に打ち勝つためには、圧倒的な努力をするしかないんです。10割の不安があるなら、圧倒的努力を重ね3割にまで埋められれば、無謀で大胆なことができるわけじゃないですか。

 それでもまだ不安で、郷ひろみの『ダディ』を初版50万部刷った時は、発売前の3日3晩は一睡もできませんでした。だけど、人生はエキサイティングでないと面白くない。ベストセラーを出す醍醐味は、自分が感動したものでマスの人が同じ感動をしてくれること。それを考えたら、それだけでやめられない。

 僕は死ぬまでいつも刃を突きつけられ「あー、参ったなあ」と後悔しながら、でも明日は乗り切るぞと思って生きていきたい。

AERA 2013年8月26日号