日本と同様、少子化に苦しむドイツでも、幼稚園に入れない「待機児童」の問題は深刻だ。しかし、それもこの夏から変わろうとしている。法令施行によって今年8月から、1歳以上の子どもは、希望すれば全員、預け場所が確保できる権利が保証されることになったのだ。高齢化が進む同国で「究極の少子化対策」となるのか、日本にとっても興味深い試みである。

ドイツでは現在、3歳以上の子どもは全員、幼稚園に入ることができることになっている。しかし、3歳未満の子どもについては制度がなく、幼稚園に受け入れクラスがあるかないか、にかかっていた。

「それだけに『3歳未満』の子どもの受け入れ先“争奪戦”は過酷でした。妊娠中から申し込みに行くのは当たり前、倍率が何十倍になることもあり、入園許可を勝ち取れるほうがラッキーな状況なんです」(現地に住む日本人の母親)

 今回の法令を受けて、自治体は急ピッチで受け入れ体制の整備を進めている。実際に受け入れを希望するのは、1歳以上3歳未満の子ども全体の3分の1程度(2008年時点で75万人と予想)と見込まれる。

 しかし、けっしていいことずくめではない。ここにきて、地域によって、体制づくりが十分でないことが判明したのだ。

 たとえば、北ドイツの州都ハノーバー(人口約52万人)では、希望者を多めの約6割と見込んで、09年から1800人分の施設増設を進めてきた。しかし、工事の遅延で約100人分が間に合っていない上、実際の希望者数が判明するのは6月中。希望者は7割に達するのではないか、と予想する専門家もいる状況だ。

一方、この新施策の両輪として、同じく8月から、1歳以上3歳未満で預けない場合、一人当たり毎月100ユーロ(約1万3千円)が現金支給されることになった。幼稚園運営には税金が投入されているが、幼稚園に入る子はその恩恵を受けられ、入らない子は受けられない。その不公平を是正するための措置である。もっとも、これには、本来なら幼稚園に通うべき子どもたちが、現金目的で家庭に留め置かれる理由になるのでは、と反対の声も大きい。

AERA 2013年6月24日号