長引くコロナ禍、リモートという新しい働き方、マルチタスクの管理業務。変化の激しい時代に対応する心と体はストレスに晒されている。働きながら自身の健康に気を配るのは容易なことではない。仕事やプライベートで頑張りすぎて、健康管理が疎かになっていないだろうか? 
 そんな働く人の健康をきめ細かくサポートしてくれるのが、産業保健師の存在だ。企業の健康管理業務を産業保健師視点で支援する、iCARE社のEmployee Success(エンプロイーサクセス)チーム(以降ESチーム)を取材した。

■従業員に寄り添う経験豊かな専門家、産業保健師

 コロナ禍によるさまざまな影響で、心身にストレスを感じることが増えたという人は少なくない。日本では、企業で働く人の健康を企業が管理していくことが求められている。労働安全衛生法により、50人以上が働く事業所には衛生管理者と産業医の選任が義務付けられているのだ。

 また昨今は健康経営への関心が高まっていることから、健康施策を推進したい企業も増加傾向にあり、従業員の健康を管理するための産業保健体制を構築・強化することに注目が集まっている。産業保健師は、その不足しがちな体制構築のリソースを補充する役割を担う。企業において選任義務はないものの、存在価値が増しているのには理由がある。

 企業の産業保健体制において、産業医と産業保健師は連携するが求められる役割はやや異なっている。産業医の主な役割は労災の防止などのリスク管理だ。従業員の健康状態から就業可否を判断し、企業と従業員の間で適正配置を決める。

 一方、産業保健師は疾病予防や健康の保持増進を目的として、従業員の健康診断後の保健指導やメンタルヘルス等の健康相談など、従業員の心身ひいては組織全体を健全な状態に導くサポートをしている。企業内で健康づくりをサポートする専門職の中でも、産業保健師はより従業員との関わりを持つことが多いのが特徴だ。その特性から、産業保健師の業務内容は企業のニーズに応じた広範囲できめ細やかなものになっており、対応時間も産業医より長いことが多い。

■企業や産業医と連携して組織の健康状態を向上

 iCARE社の健康管理システム「Carely(ケアリィ)」は、クラウドシステムと産業保健の専門家サポートを提供するサービスで、企業の産業保健体制の構築を支援している。ESチームは、産業保健師や看護師、助産師、産業カウンセラー、公認心理師などで構成され、これまで約500社の産業保健を支援してきた同社が誇る専門家集団だ。まず、産業保健師の役割について尋ねた。

「私たちの役割は、働く人と組織の健康づくりを支援することです。『働くひとの健康を世界中に創る』というiCAREのパーパスに基づいて活動をしています。もちろん、依頼主は企業なので、企業のニーズによって対応する範囲は異なります。例えば50人を超えたばかりの企業であれば、衛生委員会の立ち上げが優先事項になる場合があります。それは法律で決められた健康管理業務を履行できるよう、産業保健体制を構築することが求められるからです。人事や総務の方たちと協力して立ち上げをサポートし、企業の健康課題に基づいた安全衛生計画の策定などもフォローします。

 100〜500人くらいの規模になると、担当者のリソース不足が顕在化するケースが多いので、専門職として支援を行います。例えばメンタル不調者の対応や健康診断後のフォロー、長時間労働者へのフォローなど、企業によって重点的にケアしたい部分のお手伝いをすることが多いです。500人以上になると複数の事業場をもつ企業もあり、遠隔でも同じように産業保健師からの健康支援が受けられるよう、体制を整える企業も増えつつあります」

 いずれの場合も、人事総務や産業医、保健師がワンチームとなって働く人の健康を創っていくのである。今回取材したESチームは、オンラインで支援を行うプロフェッショナルでもある。働き方が多様化している時代にあって、時代の流れにも適合していけるような支援サービスを提供しているのが、iCARE社のCarely専門職サポートの強みだ。

■企業風土や仕事内容を理解したうえで最適解をアドバイス

 ESチームは、担当する企業の理念や経営方針、業種、職種を熟知している。その理解があってこそ、的確なサポートができるのだという。チームメンバーの一人である横内さんは、従業員への公平性を大切にする文化をもつ企業を担当している。

 サポートするにあたり、企業文化をヒアリングした結果から「プロセスの透明化」に取り組むことにした。産業医は健康診断で異常所見があった場合、その従業員の健康を保持するために企業に意見をしなければならない。その際の指標を統一し社内に開示することで、従業員により納得感をもってもらえるのではないかと考えた。そこで人事や産業医と打ち合わせを重ねて定量的な指標を設定し、従業員向けに業務と疾病リスクの関連性を示す資料も作成し、社内に公開した。

「それにより、例えば健康診断の結果、産業医が治療が必要と判断した方が、忙しくてもなんとか時間をつくって受診してくださるようになりました。健康に対する意識が向上し、健康行動を習慣化してくださった方もいます。従業員が納得して健康増進に取り組むきっかけになったのであれば、嬉しいです」(横内さん)

 別のメンバー、立山さんは健康経営に初めて取り組む企業の担当を任された。健康経営は人を資本ととらえ、経営層も巻き込んだ取り組みが必須である。そこで立山さんは人事担当者と作戦会議を重ね、企業の健康課題を洗い出し、産業保健体制と連動させるスキームを構築するよう取り組んだ。産業医や従業員が参加する衛生委員会では、どんな健康施策があるとよいのか参加者が意見を出しやすくするために、ファシリテーションを工夫して従業員主導の健康施策へ繋げることができた。

 また従業員の自発的な健康相談ができる体制や、女性特有の疾病について講習会を開催したり、セルフケアの動画を作成することで、健康づくりのサポートをしている。

「サポートを開始して1年ほど経ちますが、着実な手応えを感じています。当初は形骸化していた衛生委員会でも活発な意見交換が行われるようになって、今は健康オフィスづくりを主導しているところです。積極的に意見をくださることを本当に嬉しく感じていますし、やりがいに繋がっています」(立山さん)

 横内さんと立山さんのケースから垣間見えるのは、完全にオーダーメイドな健康づくりのサポートだ。最終的なゴールは「働くひとの健康を世界中に創る」ことで共通していても、そこに至るアプローチの方法は千差万別、企業の数だけあるのだろう。対集団だけでなく対個人についても、働く環境や業種によって生活習慣やストレスを感じる状況は異なる。例えば生活習慣の見直しを指導する場合は、夜勤の有無や食事時間、通勤手段、仕事内容などをしっかり把握し、その人に応じた指導をしているという。

 チーム内では常にメンバー同士が情報共有しており、蓄積された経験値を還元しながらあらゆる業界・業種のニーズに応えている。このことからも、企業が産業保健師という専門家を産業保健体制に迎え入れるメリットは大きい。

■中立な立場だからこそ安心して相談しやすい

 産業保健師として、日々従業員から健康相談等を受けるESチームは、働く人の悩みの多様性を感じている。リモートワークで上司が部下の体調変化を把握しにくくなっていたり、仕事環境が整っていない在宅ワークにストレスを感じていたり、働く環境だけ見ても新たな課題が生まれている。男性も育児休業を取るのが当たり前の時代、性別に関係なく誰もが育児に介護に仕事にと、フルスピードで走り続けているような状態だ。

 育児や介護などによる環境の変化に加え、職場や職務が変わるといった変化が重なると、ストレスの負荷が大きくなりやすい。また管理職に昇進したての1年目は、メンタルヘルス不調のリスクも高まるため注意が必要である。人は仕事に追われていると、自身の体調に変化を感じたとしても、そのままにしてしまいやすい。そういうちょっとした日々の違和感を相談しやすくできるよう、企業側とも工夫を重ねている。

 相談者からは「人事評価に影響しないので、安心して話せる」という声もよく聞かれる。産業保健師は、利害関係のないどこまでも中立的な第三者の存在であり、安心して健康面の悩みや気がかりなことを話せる存在なのだ。

 このような働く人を支える環境があるのに、実は意外と知られていないことは多い。ぜひ自社の産業保健体制について、とくに相談窓口について、一度確認してみるといいだろう。

 話の中で、産業保健師との面談が学生時代の保健室に例えられた。確かに学校という枠から少し外れた時間が流れるあの空間は、安心感を与えてくれたことを思い出す。一人で抱え込む前に、まずは何でも話してみると、きっと解決の糸口が見えてくる。

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提供:iCARE