中井貴一の生きる醍醐味「正しいばかりの世界は息苦しくてつまらない」 (1/2) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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中井貴一の生きる醍醐味「正しいばかりの世界は息苦しくてつまらない」

菊地陽子週刊朝日
中井貴一

中井貴一

昨年末からドラマの収録のために体重を増やした。現在は、次の舞台に備えスリム化&筋力アップに励む

昨年末からドラマの収録のために体重を増やした。現在は、次の舞台に備えスリム化&筋力アップに励む

「今作で、久しぶりに黒電話のダイヤルを回しました。急いで電話をかけようとすると、ゼロの穴に指をかけたつもりが滑ってしまい、うまく回せない。一回電話を切り、またダイヤルに指をかける。焦る心が、その指先の動きに表れる。今ではほとんどしないアナログ的な動きや感覚に、懐かしさを覚えたんです」

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 そう語るのは、俳優・中井貴一さんだ。山崎豊子の『華麗なる一族』がWOWOWでドラマ化される。中井さんへオファーが来たとき、当初は長男の鉄平役を演じるのかと勘違いした。

「ちゃんとお話を伺ったら、鉄平の父の万俵大介でした(笑)。大介は高度経済成長期、閨閥によって富と権力を獲得しようとする銀行家です。子供の頃、佐分利信さんが大介役を演じた映画を観たことは鮮明に覚えています。70年代のドラマでは山村聰さん、2000年代には北大路欣也さんが演じられていますが、まさか自分がそんな年齢に達していたとは。正直驚きました(笑)」

 WOWOWでは、5年前の開局25周年には「沈まぬ太陽」、30周年に「華麗なる一族」と、折に触れ、山崎豊子の小説をドラマ化している。コロナ禍も手伝って、世の中の価値観が大きく転換しているこの時代に、描かれる昭和の人物像。中井さんは、万俵大介という人物に、どんな魅力を感じていたのだろうか。

「ひとつの信念を貫き通す人間は、いつの時代でも魅力的です。大介は『ついてこい』という言葉さえ言わず、野心を胸に自分の道を歩いている男。つまり人間の業や性(さが)を背負った人物です。欲望の塊ですが、どこかに悲しみも背負っている。人間が社会を形成する限り、矛盾や葛藤が生じるのは当然のことだと思いますし、どんなに立派に見える人物でも、必ずどこか愚かな部分、弱い部分、ずるい部分を持っている。どんなに才能と運と権力を持っている人物でも、社会を自分の思い通りに動かすことはできませんよね。生きていく上でぶち当たるそれらの困難や矛盾をどうやって受け入れていくか。それこそ、人間が社会を作り、社会の中で生きていく醍醐味でもあると思うんです」


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