■進むか地銀再編 SBIに追い風

 菅氏はまた、官房長官だった9月の会見で、地方銀行が多すぎるとの認識を示し、「再編も一つの選択肢」と言及した。新政権では地銀の再編も加速するかもしれない。

 地銀は人口減少などで経営環境が厳しい半面、それに対応する意識が低いとされてきた。長引く超低金利で収益がますます悪化している。

「ゼロ金利の長期化」に加え、預金に対する貸出金の割合を示す預貸率が「地方ほど低い」と指摘するのは、楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジストの窪田真之さんだ。預貸率の低さは、預金に見合った貸出先がないことを意味する。「ただ合併すればいいわけではありませんが、地銀はライバル意識が強く、簡単には合併しません。追い詰められないとできません」

 静岡銀行を経て静岡県富士市で中小企業の支援などをしてきた小出宗昭さんも、地銀再編が長らく先延ばしされてきたとみる。「世の中の動きがスピードアップしているのに、遅々として進んでいません。“護送船団方式”のもと、他の業界に比べて激烈な競争がなく、何とかやってこられたのではないか」

 地銀の危機意識の低さは、大手都市銀行のリストラと対照的だという。

「メガバンクは一斉にリストラを進めてきたが、地銀は打ち出してもいません。メガバンクのほうが収益力があるにもかかわらずです」(小出さん)

 東京商工リサーチが8月に公表した調査によると、中小企業の8.5%が「廃業を考えないといけない」と回答した。原田三寛・情報部長は「地域経済が地盤沈下し、地域金融機関の稼ぎ頭がなくなってしまいます。金融機関の業績にも影響し、一蓮托生です。自分の問題と捉えないといけないのではないでしょうか」と指摘する。

 実際、19年度の決算は芳しくない。地銀64行ベースで、経常利益は前年比7.1%減の8610億円、純利益は4.8%減の5926億円だった。第二地銀38行ベースの決算になると、さらに大きく落ち込んだ。経常利益は実に33.8%減の1080億円、純利益は38.7%減の723億円だ。

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