今回、メディアは「戦場報道の必要性をどう考えるか」という質問の体を取りながら、安田さんに「自己責任論」を問うた。一方で、安田さんの知人であるフリージャーナリストの常岡浩介さんは、大手メディアの取材についてこう指摘する。

「確かに、シリアに取材に行っています。しかし、安全性を優先しようとアサド政権側のビザを取るため、プロパガンダに加担する実態もある。報道で事実を伝えようとすれば、取材で危険を冒す場合も出てきます」

 先の山田さんは、安田さんたちの考えに共感を示しながらもこう話す。

「安田さんが入国して得ようとした情報は『危険に見合う額の謝礼を得られるほど、価値のある情報だったのか』を考えるべきです。金にならなくても、民主主義のため、と信念で動く人もいるでしょうが、それはジャーナリズムではなく、人権活動になってしまいます。危険と隣り合わせの取材を続けるジャーナリストの情報に価値を見いだし、十分な対価を払う社会、民度が成熟する必要があるのではないでしょうか」

(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2018年11月16日号