経団連会長室にパソコンを設置したことで話題となった中西宏明会長
経団連会長室にパソコンを設置したことで話題となった中西宏明会長

 経団連会長室にパソコンが設置されたことで、「メールが打てるのか」などと揶揄する騒動が起きた。専門家は「偉い人がパソコンを使えない」という情報が「俺でも使えるのに」という安堵感を生み、SNS上で拡散していったのではないかと見ている。

 10月24日付の読売新聞朝刊で、経団連会長で日立製作所会長の中西宏明氏(72)に関する記事(紙面では敬称略)が掲載された。

「経団連会館の23階にある会長執務室。中西が部屋の主になった5月、卓上に初めてパソコンが備えられた。中西は事務局の役員やその部下らに、メールで施策の進展状況などを問う。部屋でパソコンを操る財界総理はいなかった。

 メールを受け取った職員の一人は言う。『最初は本当に驚いた。これが中西さん流だ。主に紙でやり取りしてきた職員の働き方も変えようとしている』」

 記事は「中西流改革」として前向きな内容だったはずだが、SNS上で波紋が広がり、誤った方向へと一人歩きしてしまった。

「今度の経団連会長はパソコンでメールを打てる!?」

「歴代会長のツールが気になる」

 これまで名だたる企業のトップが就任し、日本経済をリードしてきた経団連トップが、電子メールごときで話題にされ、まるで先ゆく日本が思いやられるかのように揶揄された。

 経団連広報本部は、会長室にパソコンを設置し、職員らへの相談や指示を直接メールで行うようになったのは中西会長が初めてであることを認める。

 だが、歴代会長のパソコン使用の有無について尋ねると、こんな回答が返ってきた。

「過去の会長も社業やプライベートにおいてノートPCやスマートフォン、タブレットを含めIT機器を使っておりました」

 広報本部によると、経団連会長の仕事は、政府の審議会への出席、外国政府要人との会合、屋内外の経済団体との交流、記者会見など多岐にわたる。そして、それらを準備する段階で、主に紙の資料を使い、対面での説明や報告が主流だったという。

 中西会長が就任後、メールでの相談や指示ができるようにパソコン設置など環境を整えたのだが、これまで同様、紙の資料によるやり取りは行っているという。

 この“騒動”を専門家はどう見るか。

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