我々の生涯賃金はあがるのか。写真は昨年の春闘の様子 (c)朝日新聞社
我々の生涯賃金はあがるのか。写真は昨年の春闘の様子 (c)朝日新聞社
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 春闘に加えて、学生の就活が本格化している。春は何かと「賃金」が気になる季節だ。今年の春闘は「3%」が焦点だが、毎月の給料や賞与を積み上げた「生涯賃金」は今、どのくらいのレベルなのだろうか。国の賃金調査から主要業種のそれを推計すると、大卒男性は「2億~5億円弱」の「目安」数字が出てきた。どの業種が高いのか、業種間の格差をどう見るのか?

【図】日本の「生涯賃金」を一挙に公開

 3月は、2019年に卒業予定の学生が就職活動を本格的に始める時期だ。元銀行エコノミストで久留米大学商学部の塚崎公義教授は、学生への就活指導でよく「生涯賃金」を話題にするという。

「就活が始まったら、半年間はアルバイトを自粛し、就活に専念するように指導しています。『先生、半年あれば50万円稼げるのに……』と不満をもらす学生もいるのですが、そんなときに『入る企業によっては、生涯賃金が数千万円違ってくることがあるんだぞ。今の50万円と、どちらが大事なんだ。だから就活はサボるな』と言っています」

 確かに、企業によって月給、ひいては生涯賃金は丸っきり違う。思えば日本が元気なころは、生涯賃金でも景気のいい数字を聞いたものだ。

「超一流企業だと軽く5億円は超える」「視聴率ナンバーワンのテレビ局はもっと上だ」……

 バブルがはじけ、「失われた20年」と言われるほどの長期停滞が続き、日本型経済の大きな特徴だった年功序列的賃金も、かなりの痛手を受けたとされる。

 いつの世も、人の懐具合は気になるものだ。ましてや、身近に就活をしている子供や孫がいたりすれば、なおさらだろう。

 しかし、残念ながら日本企業の生涯賃金を調べる統計は存在しない。

「調査はないし、個々の企業のデータも公表されていません。でも、国の賃金調査の数字をもとにすれば、業種別に生涯賃金の推計値を割り出すことができます」

 こう話すのは、コム情報センタの尾上友章所長だ。

 国の賃金調査とは、厚生労働省が毎年行っている「賃金構造基本統計調査」(通称:賃金センサス)をさす。賃金センサスは、大掛かりな調査の規模と広範に及ぶ調査内容、年に1回という頻度の点で、世界に類を見ない充実した賃金調査とされる。

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