さまざまな業種があり、働く人の構成割合も多い「製造業」と「小売業」については、全体状況を見るため産業計と同様の平均データを出してもらった。男女とも製造業は産業計より全体平均で高い数字が出ているが、これは1千人以上規模の高い数値が水準を引き上げているようだ。また、小売業は男女とも産業計を大きく下回っている。

 尾上所長によると、過去30年の生涯賃金を見ると、三つの期間に分けられるという。

「1997年までは一貫して賃金が上がった上昇期です。賃金カーブで見ると、全年齢で水準が上昇していました。金融危機が起きた97年をピークに水準は下降し始めます。2013年まで16年間、下降が続き、その後のアベノミクスで反転上昇し、今に至っています」

 賃金カーブで見ると、97年以降は30歳以降の中堅以上で水準の低下が目立ち、05年以降は50歳代の後半で賃金が低下する傾向が顕著になっているという。

 97年からの生涯賃金の下降の推移(男性)を指数化した。97年を100とすると、大卒男性で最大で8ポイント程度、高卒男性で10ポイント弱下降したことがあった(最新の数字は大卒「94.2」、高卒「91.7」)。もっとも、この下降度合いについては、「高卒の下降度合いが大卒に比べて大きかった」とする尾上所長と、「この程度なら気にするほどの差ではない」とする塚崎教授で見方が分かれた。

 さて、いよいよ主要40業種別男女大卒者の生涯賃金の比較である。

 男性トップは「航空運輸業」の「約4億8900万円」。これに、「各種商品卸売業(商社)」の「約4億7500万円」と、「金融商品・商品先物取引業(証券会社)」の「約4億4700万円」の二つが続いた。尾上所長が言う。

「航空運輸業はパイロットが全体を押し上げているとみられ、特殊なケースと言えるでしょう。商社と証券会社は、毎年のようにトップを争っています」

 女性のトップ3は、「放送業約3億7200万円」、「輸送用機械器具製造業(自動車)約3億2600万円」、「各種商品卸売業約3億2千万円」。

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