ところが、森友学園の問題が騒がれ、この講演内容が報じられると、事態が一変する。NICCOはすぐさまホームページ上で、こう訂正した。

「当会理事長と松井理事が昨年12月1日、昭恵氏と面会しましたが、特定の事業について斡旋等を依頼した事実はありません」

 松井理事が誤解しただけというのだ。NICCOに改めて問い合わせたところ、

「2014年11月から3カ年計画で行っているケニアでの事業に年間5千万円くらいの予算をもらっているだけ。理事が間違えて発言したということです」

 疑惑はまだあった。

「こんな過疎地にトヨタの最新鋭車が走り回るのを見て、不思議に思っていたら、『昭恵さんつながりか』と合点がいきました」

 こう語るのは岡山県美作市の新免昌和元市議だ。

 同市南部の上山地区の棚田はかつて8千枚以上あったが、「荒れ果てて多くが耕作放棄されていた」(本城宏道市議)という。

 同地区の有志が棚田再生、自然エネルギー活用など里山の環境保全活動をするNPO法人「英田上山棚田団」を11年に発足させたが、名誉顧問は昭恵夫人だ。

「13年2月に初めて上山に来ていただき、賛同を得まして、今も年に一度ほどご友人として遊びに来てくださっています」(同法人)

 昭恵夫人のフェイスブックに14年4月23日に訪問した記載があり、「今日も癒されました」と綴っている。

 その同法人を通し、美作市に気前よくトヨタEV車17台を寄贈し、事業に約2億2千万円を助成したのはトヨタ・モビリティ基金(TMF)だ。15年3月、昭恵夫人は同市から功労者として表彰されていた。

 経産省関係者が裏事情をこう解説する。

「美作市の萩原誠司市長は旧通産省出身。05年の郵政選挙で刺客として当時の安倍幹事長代理からスカウトされ、当選した。通産省入省は官邸の今井尚哉筆頭首相秘書官より2期上で同じ課の先輩後輩。今井氏は先輩と昭恵さんの意向を“忖度”し、トヨタに助成を働きかけたのではないか」

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