ドラマ評論家 『花子とアン』の“大きな構成ミス”を指摘
ドラマ評論家の成馬零一氏は、NHK連続テレビ小説『花子とアン』について「大きな構成ミス」があるのではと評論する。
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主人公よりも敵役の方が魅力的に映ってしまうことは映画やドラマではよくあることです。むしろ、魅力的な敵役こそが名作の条件といっても過言ではありません。しかし、敵役が魅力的すぎて、物語のバランスが壊れてしまったとしたら……。
NHK連続テレビ小説で毎朝放送中の『花子とアン』で、この数カ月起こったことは、そんな予想外の事態でした。
『花子とアン』は『赤毛のアン』の翻訳者として知られる村岡花子の生涯を描いた作品です。週間平均視聴率は、21%超(関東地区)を記録している大ヒットドラマです。
しかし、ネット上では、吉高由里子演じる花子の優柔不断な性格や、歴史考証の甘さなど、脚本に対する批判で溢れかえっています。
確かに花子の女学校時代が終わって以降、物語は迷走気味です。最大の問題は想像の翼を広げることや“学問や教養を通して花子が成長していく姿”に説得力がなく、明るくてかわいい子が何もしなくても周囲がお膳立てをして幸せになるというご都合主義のドラマに見えてしまうことだと思います。
しかし、それでも『花子とアン』が面白かったのは、花子の親友の蓮子(仲間由紀恵)の物語が、目が離せないものとなっていたからです。
蓮子のモデルは歌人の柳原白蓮です。社会運動家の宮崎龍介(作中では宮本龍一)と駆け落ちし、福岡の炭鉱王と呼ばれた夫の伊藤伝右衛門(作中では嘉納伝助)に対し絶縁状を送りつけた白蓮事件は当時の新聞で大きく取り上げられました。

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