銀座の有名クラブのオーナーママ(69)にマルサのメスが入った。

「秀ママ」の愛称で銀座界隈に名の通っていた彼女は、クラブ「R」(店名はイニシャル。以下同)の実質的な経営者だ。

 夜の銀座評論家の花椿通氏は秀ママの店をこう語る。

「黙って座るだけで5万円はかかる、一流店です。コンサバティブな財界人のサロンというより、華やかな雰囲気を好むお客さんが集うイメージですね」

 某大物元野球選手が通うことでも知られており、贔屓(ひいき)の相撲取りを連れたタニマチの会社経営者などで賑わっていたという。店の内情を知る関係者も、「繁盛していました」と断言する。

 だが2月末、秀ママがオーナーを務めていたもうひとつの店、「M」が突然、閉店した。前出の関係者は、その事情をこう明かす。

「実は昨年11月、二つの店とママの自宅、親戚の家など関係各所に国税当局の査察が入ったのです」

 秀ママは別の店を経営していた2008年にも、所得税法違反で東京地検特捜部に在宅起訴された過去がある。100人以上のホステスに支払った給与にかかる源泉所得税のうち、約2億3千万円を納付していなかったからだ。

 前出の関係者によれば、あきれたことに「今回も手口はほぼ同じ」だとか。ざっと見積もって数億円が脱税されているというが、秀ママは前回から何の反省もしなかったのか。

「彼女は“銀座の妖怪”です。お客さんにお金を使わせるテクニックや魅力もあるし、検察の元大物幹部と付き合ってアドバイスをもらうなど、したたかな一面も持ち合わせている。ただ、税金を払わなくてはいけないという感覚が、あまりにも欠けていた。まあ、追徴課税を命じられたとしても、払う余裕があるのだと思いますけど」(前出の関係者)

 秀ママはどうなるのか。元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏に聞いた。

「源泉所得税を払っていなかったとしたら、従業員から預かったお金を横領したということ。身内を裏切ったのと同じです。もし、同じような手口で2度目の起訴になった場合、実刑が下される可能性が高い」

 ただし、秀ママの「銀座人脈」により強力な弁護団が結成された場合、結果がどうなるのかは未知数。執行猶予が付く可能性も捨てきれないという。

“銀座の妖怪”対マルサの仁義なき戦いは、まだ始まったばかりだ。

週刊朝日  2014年5月2日号