「国を二分する論争」とは、まさにこのことを指すのだろう。フランスではいま、同性間の結婚および同性カップルの養子縁組の合法化をめぐって激しい論争が続いている。

 議論に火をつけたのは、2012年5月に就任したフランソワ・オランド大統領。同性婚の合法化を公約に掲げて選挙に勝利したオランド大統領は、就任直後から法案の準備を着々と進める。13年1月29日にはフランスの下院にあたる国民議会が「すべての国民の結婚と養子縁組に関する法案」の審議を開始した。

 この流れに強く反発したのが、国内のカトリック教会などの保守派だ。1月13日に法案反対派がパリでデモを行うと、警察発表で約34万人、主催者発表で約80万人が参加した。デモでは「家族は国家の礎だ」などと書かれたプラカードが掲げられ、シュプレヒコールが街に鳴り響いた。

 一方、同性婚支持派も負けていない。1月27日に開かれたデモには警察発表で約12万5千人、主催者側の発表で約40万人が参加。合法化に向けて「選択する権利を」などと訴えた。

 昨年11月に発表された仏ル・モンド紙と世論調査機関イフォップの世論調査では、同性婚の賛成派は65%を占めるものの、養子縁組まで認める人は52%にとどまる。法案の採決は3月までに行われる見通しで、同性婚をめぐる論争はこれから本番を迎える。

週刊朝日 2013年2月15日号