1997年に東京都渋谷区で起きた東電OL殺害事件の再審で、無期懲役が確定していたゴビンダ・プラサド・マイナリさん(46)に11月7日、無罪判決が言い渡された。この判決を書いた東京高裁の小川正持(しょうじ)裁判長(63)がここにきて注目を集めている。
というのも、小川氏は、政治資金規正法違反の罪で強制起訴され、12日に判決が下される「国民の生活が第一」の小沢一郎代表(70)の控訴審の裁判長も務めているのだ。小川氏とは、いったいどんな人物なのか。
「弁護側の話にも、検察側の話にもよく耳を傾けて、バランスのとれた判決文を書く裁判官。変な癖や偏りのある人ではありませんよ」
そう話すのは司法ジャーナリストの鷲見一雄氏だ。小川氏は岐阜県出身。名古屋大法学部を卒業後、74年に司法試験に合格すると、最高裁調査官、東京地裁判事などを歴任してきた。刑事部一筋のベテランで、東京地裁の裁判長だった2004年にはオウム真理教の元代表、麻原彰晃(本名・松本智津夫)に死刑を言い渡し、元公安調査庁長官が詐欺罪に問われた朝鮮総連詐欺事件でも控訴審の裁判長を務めるなど、“判決遍歴”は華やかだ。
裁判ライターの長嶺超輝(ながみねまさき)氏も言う。
「エリート中のエリートですね。裁判官は2~3年ごとの全国的な転勤が宿命ですが、小川さんはほとんど首都圏から離れていない。東京高裁のヒラ判事をすっ飛ばして、いきなり部総括判事に就任するのも珍しい。最高裁図書館長時代は、図書館を研究者以外にも積極的に使ってもらおうとインターネットでの情報公開に取り組んでいたそうで、地に足の着いた質実剛健な人柄なのでしょう」
※週刊朝日 2012年11月23日号