6歳の息子を持つ40代の父親。自分のミスで小学校受験の第1志望校に不合格となり、妻とどん底にいます。どうしたら前向きになれるのでしょうか。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:6歳の息子を持つ40代の父親】

 6歳の息子を持つ40代の父親です。昨秋に小学校受験をしたのですが、私のせいで第一志望が不合格になり、私も妻もどん底にいます。試験当日の朝、学校に向かうバスが遅れて、「絶対遅刻できない」という焦りから募集要項で禁止されていたマイカーに乗せてしまったのです。面接で「今日ここまでどうやって来たか?」と問われた息子は、素直に「お父さんの車」と答えました。その時に不合格印が押されたと思うと、後悔の念しかありません。

 息子は、幼稚園年中の秋から約1年間、毎朝ペーパーをこなし、降園後には塾に通い、本当に頑張っていて、叱咤激励する日々でした。私のせいで希望の小学校生活と高校までの一貫教育を奪ってしまったと思うと苦しいです。この4月から息子は、第2志望校だった小学校に楽しそうに通っていますが、親だけが引きずったままです。どうかアドバイスをお願いします。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「過(あや)まって改めざる、是(こ)れを過まちと謂(い)う」(衛霊公第十五)

・「人、遠き慮(おも)んぱかり無ければ、必ず近き憂い有り」(衛霊公第十五)

【現代語訳】

・「人は誰でも過ちを犯すものだが、過ちを犯したと知っていながら反省せず、改めないことが、本当の過ちだ」

・「人がもし、遠い将来に対する考えがなく目先のことにとらわれているとしたら、必ず困ったことが起こる」

【解説】

 お答えします。もし息子さんが現在通っている学校で楽しそうなら、何ら問題ないのではないでしょうか? 息子さんの代わりに、別の家庭の子どもが志望校に入学した、それだけのことです。子どもは案外すぐ忘れるものですし、親が子どもの目から見てもわかるほどの落ち込み方をしてしまうと、子どもの心を暗くしてしまいますよ。

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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