小学1年生の息子を持つ30代の父親。好き嫌いが多くて給食を残しがちな息子を、妻は「単なるわがまま」と言って改善させようとしますが、父親は自分自身が偏食なために「受けつけないものを無理に食べさせなくていい」と考え、意見が対立しています。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から孔子の格言を選んで現代の親の悩みに答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

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【相談者:小学1年生の息子を持つ父親】

 小1の息子を持つ30代の父親です。息子が食べ物の好き嫌いが多く、とくに野菜はほぼすべて嫌いで、小学校の給食をよく残します。妻は「好き嫌いは周りに気を使わせるし、単なるわがまま。なんでも食べよう」と改善を試みますが、息子は「お父さんも嫌いなものを食べないから自分も同じ」と言い張ります。私も好き嫌いが多く、「受けつけないものを無理に食べる必要はない」と息子に賛同し、妻と意見が対立しています。

 私は、小学生の時に先生から「残さず、食べ終わるまで帰ってはいけない」と言われ、放課後一人で残されたトラウマがあります。今は、先生がそこまで強く「残さず食べろ」と言わなくなっているようで、正直よかったと思っていますが、今の時代に「なんでも食べよう」なんておかしくないでしょうか。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子曰(い)わく、驥(き)は其(そ)の力を称せず。其の徳を称するなり」(憲問第十四)

・「子曰わく、性相(せいあ)い近きなり。習(なら)い相い遠きなり」(陽貨第十七)

【現代語訳】

・孔子がおっしゃった。「名馬というものはもちろん『能力』をもっているが、称賛されるのはその『能力』よりも、訓練によって体得した馬としての『徳』である。人間もそれと同じなのは言うまでもない」

・孔子がおっしゃった。「人間の生まれついた天性は似たり寄ったりでそんなに個人差はない。ただ、後天的な習慣や教育で、人間には善悪や賢愚の差異ができ、互いに遠いものとなるものだ」

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山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/文献学者・中国学者。大東文化大学教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞。『ステップアップ0歳音読』(さくら舎)『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など著書多数。母親向けの論語講座も開催。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族

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