27年にわたり中学受験指導を行っているベテラン塾講師・矢野耕平さんが、実際にかかわった受験生の実例や、自身で足を運んで取材した私立中高の様子をもとに、中学受験や学校選びのヒントをつづります。受験するなら知っておきたい、私立中学と中学受験の「リアル」とは――。

MENU ■そもそも「わが子に合う学校」とは何か ■コロナ禍でもわが子に合う学校を見つけるための裏技とは ■下校する在校生たちからその学校の「教育観」を読み取ろう

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 中学受験するメリットの一つは、数ある学校の中から、わが子に合った学校を選べるということだろう。これは、志望校選びで最も重要なことの一つでもある。受験生といっても、そこはまだ小学生。自らの確固たる意志で「志望校」を選定するようなケースは正直少ない。保護者が主導権を握って志望校選定に努める必要がある。

 だが、この「わが子に合った学校」というのを保護者が見極めるのは、実は難しい。

 なぜか。わたしの塾であったこんな例を紹介しよう。

 2年前のこと。塾に通うA君の保護者と面談をしていた際にこんな相談を受けたことがある。

「ウチの子は消極的な性格なので、活発な生徒さんが多い学校だと気おくれしてしまうと思うのです。そんな子にぴったりの学校はないですか?」

 わたしはびっくりした。その子は塾で見せる姿は大変に明るく、分からない問題があるとすぐに声をかけてきて質問するようなタイプだったからだ。わたしは保護者にこう返した。

「いえいえ、塾ではむしろ積極的に学んでいますよ。ところで、小学校の担任の先生にはどんなふうに見られているのですか?」

 するとその保護者いわく、わたしと同じように小学校の担任からも積極性を発揮していると言われて戸惑っていたとのこと。

 これもやはり2年前。志望校選定の話題になった折、受験生Bさんの保護者がこんなことを切り出した。

「あの子はどうも男の子を嫌悪しているようで、だったら、わが家は女子校一択かなあと考えています」

 わたしは意外に感じた。塾でのBさんは授業と授業の合間の休憩時間に男子たちと談笑する姿がよく見られたからだ。そういえば、塾では違うクラスに属している同じ小学校の男の子とも仲良しだ。

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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