緊急事態宣言下で実施された、今年の中学入試。コロナの影響で学校や受験生はどう動いたのか。連載でお届けします。

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■併願校数が減少傾向に

 コロナの影響で受験生が減少すると見られていた今年の中学受験。しかしふたを開けてみると、私立・国立中学受験者数は、5万50人(昨年4万9400人)と約650人増加し、受験率も昨年の16.62%から16.86%に高まった(首都圏模試センター調べ)。コロナ禍にも関わらず、7年連続で受験者数が増加した理由を、同センター取締役教育研究所長の北一成さんは次のように話す。

「2020年4月に緊急事態宣言が出されて以来、私立中高は公立と比べて、オンライン対応が明らかに早かった。公立は自治体によって差が生じ、中には課題を郵送するだけにとどまった学校もあったようです。保護者は対応の差を目の当たりにして、私立に対する信頼が高まったのではないでしょうか」

「一人当たりの併願校数が減っている」と話すのは、SAPIX教育情報センター本部長の広野雅明さんだ。

「本塾の生徒は、例年埼玉で1~2校、千葉で1~2校、東京で3校と、一人当たり計7~8校に出願し、実際には5校くらい受けるパターンが一般的ですが、今年は一人当たり0.3校ほど減っているという印象です」

 東京、神奈川の受験生は1月にお試しで埼玉や千葉の学校を受けるパターンが多いが、受験日程の関係で、埼玉と千葉に差が出たという。

「1月10日から受験が始まった埼玉の学校の志願者数はほぼ例年通りでしたが、1月20日に受験が始まる千葉の学校では、志願者が減りました。万が一、千葉の学校を受験した際に罹患したり、濃厚接触者になったりして、2月に本命を受けられなくなるようでは困ると考えたのでしょう」(広野さん)

 安田教育研究所代表の安田理さんの調査でも、受験生一人当たりの併願校数が減っており、なかでも全体的に最難関校が減少しているという。

「感染リスクを下げるために受験回数を減らそうとすると、まず合格の見込みが低いところをあきらめます。1都3県すべてにその傾向が見られました」

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柿崎明子
ライター 柿崎明子

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