そのぶん男女ともに、それに次ぐ学校が伸長した。東京の男子校では駒場東邦(東京・世田谷区)が40人増え、昨年比107%。海城(東京・新宿区)も伸長した。女子校では鴎友学園女子(東京・世田谷区)が209人増やし昨年比119%に。
神奈川についても「聖光学院、栄光学園の両トップ校ともに減っています。例年では考えられません」と安田さん。東京同様、次のレベルのサレジオ学院が増加した。
森上教育研究所代表の森上展安さんによると、「例年に比べると、比較的下位、偏差値でいうと50以下の学校の志願者が増えた」という。
「例年、中学受験は偏差値が高い学校ほど志願者が集まるのですが、今年は下位の学校にも集まりました。私立へのニーズが高まり、もともとは公立中への進学を考えていた層からの参入が増えて裾野が広がったと考えられます」
今年は、明法、佼成学園女子、東京女子学園、中村、和洋九段女子、品川翔英、目白研心など、募集に苦戦していた学校も志願者が増加した。
「合同相談会や学校説明会もできない状況で、こうした学校は厳しい結果になるのではと思っていましたが、飛躍的に回復した学校も少なくありませんでした」(安田さん)
教員の生徒への思いを感じさせる多彩な動画や、一人の教員が一組の親子を学校案内するなど、人数を制限して手厚く説明会や見学会を行った学校が、受験生と保護者の支持を集めたという。
森上さんは、さらに志願者増加の理由に、国による「就学支援金」をあげる。2010年から始まった就学支援金制度が20年に拡充され、世帯年収が590万円未満の場合、私立高校に進学すると年間最大39万6000円の就学支援金を受給することができる。910万円未満でも年間11万8800円受け取れる。
「当てはまる家庭も多いでしょう。高校で支援金を受け取れるなら、中学の3年間はがんばって私立に通わせようという保護者も増えているのではないでしょうか」(森上さん)
(文/柿崎明子)